調整

2012年6月24日(日)

二週間程前、古典調律の研修会を、国立音大調律科の同窓会有志で行なった。
講師に同期の友人、岡本芳雄君を兵庫県から呼んだ。

彼は社会に出てから、ずっとと言っていい位古典調律を研究している。色んなパターンを自分のアイデアを取り入れ、バッハの調律法を少し変形させ、ロマン派以後の楽曲や、モダンピアノにもしっくりくる古典調律の調律法をあみ出した。

何故、音楽家はその調をチョイスしたのか、を実体験するには古典調律ではないと無理である。
現代の、数学的に完全に均等に12個の五度と7つのオクターブのズレを分配した平均律は、どの調であろうが和音の響きは全く同じである。
ハ長調の主和音も、変イ長調の主和音も響きは全く同じ。調による響きの性格は存在しない。
しかし、古典調律にした場合、各調によって響きは全く違うので、どの調で楽曲を作曲(演奏)するのか意味がある。

パイプオルガンの場合、弦の張ってある鍵盤楽器より調律の変化は少ないし、自由に調律法を変える事はできない訳なので、パイプオルガンで演奏された曲の調には確実に意味はある筈だし、チェンバロやハンマーフリューゲルも、調がその意味を持っていた時代に存在していた訳なので、同じように調律されていたと考えるのが自然である。
調性の意味を考え、身近にそれを感じる上で、モダンピアノでも古典調律をしたいが、モダンピアノで古典調律をする度に、もっとしっくりできない物かと常々思っていた。なので、尚更彼の講義は面白く、目の前に大きく立ちはだかっていた壁を少しずつ壊してくれた感じだった。

彼の考えた調律は、ホームページでも紹介されている。

Bach’s Seal 1.0

平島達司さんが「ゼロビートの再発見」という本が話題になった87年頃、ベルクマイスターが考えた古典調律でモダンピアノを随分調律したが、どこかしら違和感(極端さ)を感じ、最近は演奏者から要求の無い限りモダンピアノでの古典調律は率先してしなかった。
しかし、最近フォルテピアノの調律を古典調律で行なう機会が増えたことから、たまに演奏者から古典調律をモダンピアノで行なう依頼を受けたとき、その違和感が以前よりさらに強く感じられるようになっていた。(フォルテピアノでは違和感を感じないので)

昨日、今八王子の工房に展示しているベヒシュタイン B型(弦の共鳴部分が少ないので、効果を感じやすいと思い総アグラフタイプのベヒシュタインを実験に)を、岡本君の考えたバッハの調律法をアレンジした方法で調律してみた。
平均律のように全てが同じでなく、各和音の響きの違いを確実に捉えられ、且つ、極端な感じを受けない。

何人かのピアニストに弾いていただき、率直な意見を伺いたい。皆さんお願いしますm(_ _)m
僕はとても面白い、と感じている。

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