静寂

2010年5月30日(日)

一昨日、チェンバロのコンサートを久しぶりに聴いた。

ダミアン原田さんという聖マドレーヌ大聖堂のオルガニストを長年お務めになったという方だった。
病院でのロビーコンサートという事もあって、小品を中心にしたプログラムだった。ダミアンさんの心に語りかけてくる表現は、友人の尺八の演奏からも感じる”動と静”から成される広いキャンパスを心に広げてくれた。

素敵な演奏だった。

演奏の合間に原田さんが
「日本は、レストランでもどこに行っても音楽が流れている。日本人は音楽好きか? 否、静寂が怖いのだ。なぜなら、静寂は自分自身を見つめるから」
とおっしゃった。

確かに、ヨーロッパは ”今でも” 静かで、週末は週末として、夜は、夜として存在している。

これでもか、これでもか、という筋肉的な表現から(音楽のみでなく現代社会の表現全体を指して)心を解放する術を覚えないと、人類が長い時間かけて育む事ができた表現の一つが、何処かに置き去りにされてしまう。

ダミアン原田さんの演奏を聴き、感じ入った事をきっかけ書いたのだが、古楽だから、という事ではなく、古典やロマンのベースは”そこ”に存った事を忘れてしまえば、作品を造った偉人の思いは到底伝わらないだろう。

さて、来る6月20日 八王子の工房で「工房コンサートvol 2」 を行なう。

シューマンは、今年ショパン同様生誕200年だが、工房にあるシューマン時代のオリジナル楽器 約1830年製造 を使用し、現代のヨーロッパのピアノと比較演奏をしてみょうというアイデアから今回のコンサート「工房コンサートvol 2」の骨子が生まれた。

ピアニストの末永匡さんと稲岡千架さんがパフォーマンスして下さる。

ノミや鉋、のこぎりがあるローテクな空間でのユニークなコンサートで、シューベルトやモーツァルトの心を、現代とつなげながら鑑賞いただく場をご提供させていただくのが企画の趣旨である。

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