あるピアノとの巡り会い

2007年1月3日(水)

正月に自分に課した課題の一部のベヒシュタインホームページの翻訳の添削は、CDやコンサートの録音を聴きながらすることになった。(もう一つの課題が未だ終わっていない。。)
普段、ゆっくり家で腰を下ろして、という事が、ここの所できなかったので、ゆっくり何度もピアノCDを聴く事ができたのは嬉しかった。
昨年11月下旬に、ベヒシュタイン アップライト 12n の納入調律に伺った際、KG先生から古いスタインウエイで録音したCD (NYSJ-1887) をいただいた。
ここで使われいる1887年のスタインウエイは、以前、先日解体されてしまった赤坂のキャピトル東急ホテルの “けやきグリル” というレストランに設置されていたピアノだという事が、先生との話の中で判り、その巡り合わせに思わず涙ぐんでしまった。

その、ローズウッドのピアノがそこのレストランに設置されていた約20年前当時、当時自分が勤めていた会社の上司であったHさんと一緒に、自分はそのピアノの調律管理をしていた。
ある日、
「今度、ホロビッツ氏がここに泊まることになったので、恐らくこのレストランで食事をする事にるだろうから、もしかして、ピアノをお弾きになる事もあるかもしれないので、しっかり調律をしておいて欲しい。」
という旨の電話が、ホテルのレストランのご担当の方から会社にあり、Hさんと一緒にピアノの調整に行った。ホテルは非常に乾燥していて、ピアノの保守管理が本当に大変であったが、そのピアノは本当にささやくような音で「いい感じ」に響いていて、現状でできる限りの事をして、Hさんと二人で帰路についたのを覚えている。
約一月後の点検調律に伺ったとき、
「ホロビッツさんが弾いて喜んでられたよ」
ホテルのレストランのマネージャーに温かく言われたときは胸をなでおろした。
その話はそれきりになっていたが、これ以上我々が詳しく聴く事が無かった “けやきグリル” でのホロビッツ氏のエピソードが、ホロビッツの調律師をご担当されていた、フランツ・モア氏が書かれた本「ピアノの巨匠達と共に 音楽之友社 ISBN4-276-21743-1」の中 P49-P50 で紹介されたときは、本当に驚き、同時に自分の仕事に誇りを感じた。

そんな関わりがあったピアノと、又、こういう形で再会できるという事、Bechstein 12nをきっかけにしたKG先生との再会、全てが不思議で、自分の調律師という職業にとても感謝した。

ピアノは再び修理され、フォルテが自分の音の記憶よりもふくよかになった感じだが、先生のタッチから奏でられる響きは当時のレストランの香りまでをも思い出させてくれ、CDを何度何度もかけながら、仕事をした。

KG先生にそのCDをいただいた約2週間後、名古屋でフランツ・モア氏とお会いする機会があった。
心から、ピアノに再会させてくださったKG先生と、全ての偶然に、心から感謝したい。

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