杉並公会堂の行事を終え、深夜ピアノを倉庫に戻し、もの凄い雨の中を家に帰ると、天気予報は台風の事を淡々と伝えていた。
このままだと、明後日早朝の便は欠航になるのかな?
と、まだ、ちょっと人ごとな感じで寝むりについた。
翌朝、寝ぼけ眼に、沿岸部の高波だの飛ばされた屋根等の映像が飛び込んできて、漸くこの台風は他人事でなくなり、仕事の都合が付けば今日中に九州へ飛ぼうと思いながら、会社に向かった。
で、遮二無二仕事を調整し(Hさんごめんなさい m(_ _)m)同じ様に考える人たちでごった返す羽田でチケットが交換でき、何とか、欠航になる前の最終便で目的地に飛ぶ事ができた。
今回の目的は、宮崎のオルブライトホールで行われた、マティアス・フックスさんと、稲森愛さんのジョイントコンサートで使う、ベヒシュタイン D-280の調整。
前日、薩摩川内市の藤井さんのところで半日かけて調整をし、当日早朝にホールに運び込んだ。
予定の時間までに作業をやっつけると、Matthiasの一年ぶりの懐かしい顔がステージの袖から表れた。
直ぐにピアノに向かったMatthias(フックスさん)がシューマンを弾き終えると、
「お、これ良いじゃない!いい感じで弾けるよ。ありがとう。」
とにっこり。
漸く心が労われ、そのまま二人のリハーサルを立ち会った。
稲森さんは、今回はモーツァルト、シューマンとリストというプログラムだった。
ベヒシュタインは音の粒が良く聞こえる。なので、ある意味フォルテピアノのパィーンと言う感じの強いアタックも表現できるので、モーツアルトは時代的にベヒシュタインに関係ないが、バッハとベヒシュタインの相性が合うのと同じような意味で好きだ。
リストのカンパネラも、いい感じで高音が響いていた。
しかし、今回度肝を抜かれたのが、Matthiasのドビュッシーの花火だった。
印象派とベヒシュタインの響きは本当に良く会う。演奏も本当に最高だった。締めくくりに、虹色の花火が、満員御礼のオルブライトホールにドーンといっぱいに広がった。
この瞬間、昨日体験した嵐はどこかに消えていった。