2008年2月29日(金)
カンカンカン、ギコギコと鋸やのみを匠に使うK君
彼の木工センスは初めて会った時に比べると著しい上達を認めざるえない。「好きこそ物の上手なれ」とは良く言った物だ。
仕事が奇麗にできるかは、頭の中にあるイメージで決まる。道具も完璧に整備されなければならない。が、何よりも頭の中にあるイメージだと思う。
戦前のベヒシュタインの今回のオーバーホールは、ピン板と言うチューニングピンを固定する板の交換から始まった。
ハンマーで叩かれた弦の振動はチューニングピン迄その揺れを伝えている。よって、チューニングピンからピン板にその振動が伝わりピアノ全体に音が循環しなければならない。
ピアノはただの工芸品ではなく楽器である。
良い音、個性ある音を出す為に一流メーカーは、夫々工夫をしている。その製作者の意図を感じる気持が無ければイメージもわいてこないし、どう工夫すべきなのかも解らない。
特に、ベヒシュタインや、スタインウエイのピン板と側板の接着は工夫が感じられ、その部分にふれるとわくわくしてしまう。
木材の部分には、当時製作をした人の、手書きの番号やサインがある。もう、当時製作にあたった職人さんは恐らくお亡くなりになっていると思うが、繊細な仕事は100年後の我々を今も尚確実に感動させている。
K君の手に、100年前の職人が何かを語りかけ、彼がそれを感じているのが伝わってくる。