張弦

2009年9月8日(火)

はてさて、ピアノの弦の寿命はどの程度と見積もる事ができるだろう?
お客様からも同様の質問はしばしば受ける。

使用が激しければ断線確率も高くなるし、雑音のような感じも強くなる。使用がそれほどでもなければ弦に物理的な問題が無ければ、50年以上弦に問題無いピアノとしばしば出会う。建築関係の方の常識からするとあり得ない話のようであるが、ピアノの弦の殆どは、弾性限界値(弦は引っ張ると伸びる訳だが、張力を緩めるともとの形状に戻る限界値)の70%~80%辺りで引っ張られている。後、もう少し引っ張れば金属の分子がそのまま分離してしまうのだ。じゃあ何故、住宅や橋の設計の基準のようにゆとりを持たせた負荷で、もう少し押さえられないのか。
それは、音が奇麗に響かないからである。

今回、あまり古いピアノでは無かった(僕より若い)が、どうやらドイツでこのピアノを使用していた方の練習が多く、且つ保管もすこしファジーだったのか、明らかに弦は悲鳴を上げていた。
なので、全部交換してしまった方がいいよ。という話になり、急遽、全ての弦を変える事にした。いま、八王子の工房でその作業が行われている。

Bechstein L

張弦作業は、工房の修理チームの技術者は慣れた物で、何のストレスもなくこなしているから頼もしい。

響板を拳で叩くと良い音で鳴っている。

さて、完成したらどんな方がそのピアノとの新たなエピソードを書いてくれるのかピアノも我々も楽しみだ。

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