振動

2009年10月3日(土)

数年前から調律に伺っている埼玉県のKさんが出産でお休みする事になり、短いお休みの間にピアノ教室のピアノの修理をすることになった。一昨日からちまちまと修理を開始し、昨日午前中に断線が頻繁になってきた高音2つのセクションの弦張替をやっつけた。
鉄骨を外さない弦交換作業程度であればピアノ本体は工房に運び入れないでやってしまう事ができる。今回は、響板やピン板など本体はしっかりしていたのでアクション以外は現地で修理をすることにしたわけだ。

Saitenbeziehen

昨日は仕事の流れ上、心のポジションが午前と夕方で対照的であった為、弦から起こる“響の素”の変化を、改めて強く体感できた一日だった。

ピアノの響の音源は弦になるが、張弦作業の時に聞く弦を爪で弾いて鳴る時の音そのものは決して豊かとは言えない。
このような手作業をするときは、方針だけきめてしまえば後は体を機械的に動かすことに徹し、集中して黙々と作業を進める。でないと作品は綺麗に仕上がらない。
なので、自分の爪で弦をはじき、生じる弱い音の“音程”のみに意識を集中させる。数時間そういう作業に身を置くと、耳は単調な“正弦波”に成れていく。

その単調な音の状態に慣れきった頭で、昨晩は、お客さんのN先生が出演されると言うことで誘われていた新宿のオペラシティーのリサイタルホールで行われた連弾コンサートを訪れた。

前半の楽曲も楽しかったが、コンサート後半のホルストの惑星は、音量も音色の数もフルオーケストラを完全に彷彿させる豊かさで本当に圧倒された。
作曲者自身が連弾譜を書いたと言うことらしいので尚更かもしれないが、ホルストはピアノの響きの魔法を熟知してたのだろう。奏でられるデュオのピアノはピアノの響きを超越し、僕の心を別世界に誘った。

アコースティックピアノの音響メカニズムの凄さとアナログの響の魔法を再認識させられた。

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