楽器のチューニングピッチについて1

2017年6月9日(金)

新しい情報が思いもよらない方向からやってきました。ピアノの歴史を調べると音楽の歴史に登場するすが1700年付近なので、その時点からの情報はピアノ関係の書物に書いてあるのですが、それ以前はどうだったのか?あまり考えていませんでした。
それが、衝撃の事実が分かりました。

18世紀以前の音楽と楽器の状況を知るにはそれ以前から存在している楽器について解説された文献にあるかもしれない、と読んでみましたのが古楽フルート奏者の前田りり子氏の書かれたフルートの現代への変貌を解説した本が「フルートの肖像」というタイトルで出ておりますのでご興味のある方は是非!

鍵盤楽器をやる人の常識的な知識として18世紀の基準ピッチは415Hzと現代の440〜442Hzと比較して約半音低い音であったと知られています。約200年かけて音楽のチューニングピッチは半音上昇したとされています。その主な原因は人類の音楽を過去の演奏よりもより優れた演奏として残したいという欲望であったとされています。チューニングを多少高くすることは最も簡単なパワフルで響きの豊富な状態を作りだす手段でした。
近年では70年〜80年代にカールベーム。ヘルベルト・フォン・カラヤンがヨーロッパのメジャーオーケストラの規準ピッチを上昇さた事が有名です。

200年で半音上昇したということは・・
その200年前はさらに半音低かったのではないか?と考えていましたが1600年代は場所によりピッチに二分化して大変なことになっていました。

オペラやバイオリン族の発展の歴史が開花したイタリアでは基準ピッチはなんと高い地域では470Hzで場所により低い所で415Hzであったようです。この上下する量は現代のピッチ440Hzをからすると半音上から半音下まで様々であったと言うことになります。基本ハイピッチなイタリアでは18世紀初め一旦低くなりその後、再び上昇し出す傾向があったようです。ピアノの歴史はその低くなって上昇する部分から始まります。

事、絃楽器の名器が誕生した16〜17世紀、クレモナのピッチは466Hz付近だったとされています。これも現代のピッチよりも約半音高いピッチです。興味深いのは名器が誕生した時点での想定されていたピッチは想像以上に高いものであったと言うことです。
その後の楽器はその時期に作られた物をお手本とされます。

私は過去に作られ年々モダンに音楽が変化する中ピッチが上昇し遠い昔に作られて完成された絃楽器達には酷な事をしているなと常々考えていましたが、もともとハイピッチに設計された絃楽器は時代がハイピッチ化する事で本来の設計のピッチへむしろ近づいて行っているという事実を知りました。私が心配したりする必要は全くなかったのです。

一方、ベルサイユ宮殿を始めとす宮廷文化が開花したフランスではしっとりとした低めのピッチが好まれ390〜435Hzとこれまた低いピッチが基準とされていました。

これだけのピッチの差がありますと楽器の反応に明らかな違いが出てきます。ハイピッチなイタリアとローピッチなフランス。バロックの2大様式にはピッチにも明らかな違いが出ていたと言うことになります。

一方、当時、プロ奏者が演奏する楽器(奏法が難しい楽器、バイオリン族、金管楽器、オーボエ)はハイピッチ
アマチアが演奏する楽器(比較的奏法が簡単な楽器、フルート、リュート、ガンバ)はローピッチであったと言うくくりもあります。

つづく・・・