2012年2月4日(土)
今回1800年代のフランスのエラール (Sebastian Erard) の調整を引き受ける事になった。
お客様の自宅で調整をやりきる事が場所と道具の問題で少々困難な感じだったので、昨日アクション部分だけを引き取らせていただいた。
早速工房に持ち帰ったアクションを工房に残っていた皆とばらしてみた。
ここの所ヒストリカルの楽器をしばしば調整する機会があるが、特にセバスチャンの技術には、当時のアクションに触れる度に感服させられ、技術者として新鮮で謙虚な気持にさせられる。
20世紀に行われたピアノ製造技術、特にアクションの進化は、量産化と音量追求への道を前提にした改悪ではなかかったのかと思わせる程、彼が発明したカラクリそして当時の加工技術は見事としか言えない。
楽器は演奏者のパフォーマンスの要求に従い変化したわけだが、最近の音を消す楽器の技術(サイレントXYZ)の需要を見れば、一般の家庭の中での楽器、特にピアノの音量は大きすぎる物になってしまった。というのは言い過ぎではないと思う。
ならば、もう一度過去を顧みるという動きがもうすこしあっても良い筈だが、KYなどという言葉が流行する、周りと同じ事をしていないと不安になる民族には、別の意味で難しくなるのだろうか。
今日はこれよりベヒシュタインのアップライトの調律へ。
しかしいろいろ考えさせられる。