納品

2013年2月18日(月)

高崎駅を過ぎトンネルを抜け軽井沢に電車がさしかかった時、車窓から目に飛び込んだ真っ白の世界は、もう少しで目的地に着く事を知らせてくれた。

約半年前の秋、長野県佐久市にある長野県野沢南高校の音楽室からオーバーホールをする事になったピアノを引上げた。工房に搬入後すぐに八王子の工房でK君は修理に取りかかったが、格闘の末漸く完成の目処がついてきたのは年が明け、すっかり正月気分も抜けた頃だった。標準化という言葉とは無縁の作業だった。
そんな修理中の様々なシーンを思い出しながら雪の舞う佐久平駅で小梅線に乗換へ、中込駅でタクシーを拾った。

クレーンで雪の中の搬入は、この修理の苦労にふさわしいドラマティックなシーンとなった。

Lieferung des Fl?gels

このピアノは大正時代、長野県野沢南高校の創立15周年記念として当時購入されたということだ。
以来、音楽の授業で恐らく昭和40年代まで使用されていたようだ。その後状態も悪くなったのが理由だと思うが、音楽室の五線の黒板前の先生が演奏する位置から、音楽室後ろの片隅に他の古い楽器と一緒に置かれる事になった。
数年前、音楽の教諭がベヒシュタインがこれではあまりにも。。。と言う事で問題提起して下さり、なんとかできないものかと同窓会との間でも話題にしていた時、同校出身者のドイツ歌曲で有名なソプラノ歌手 白井光子さんと、その伴奏者のハルムート・ヘル (Hartmut HOELL) さんがコンサートのリハーサルの為同校の音楽室を訪れた。
その際、片隅に置かれた団子足のベヒシュタインに目が止まりお弾きになられたそうだ。

自分も家でベヒシュタインを使用しているし、このピアノは良いピアノだから修理なさったらどうかという言葉と共に彼らが修理を後押しされたと言う。

4月上旬に白井光子さん、ハルムート・ヘルさんの演奏によるお披露目コンサートが同窓会により準備されていると知らされた。

修復された85歳のベヒシュタインの新しいエピソードが今日始まった。

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