2010年10月30日(土)
C.BECHSTEIN D-280を持ち込んでの秩父ミューズパークでの録音は今回で2回目。
首都近郊とは思えない森の中の空間は、日々の雑踏を完全に遮断してくれる。
ピアノの設置が完了し、今回の録音を担当する阿部君が調律を一先ず完了させる。
フランスから全日到着したばかりのマエストロが静かに現れた。
エルバシャ氏は椅子の高さを静かに調整し、鍵盤に静かに触れた。
コラールかと錯覚する様な静かだが力のある響きがホールを満たした。
ピアノでの多声音楽演奏の意味を明確に提示されたようだった。
特に小さな音量での緊張感とリラックスした響きのコントラストが見事だった。
繊細な彫刻のようなバッハの平均律が、空間と時間を支配していた。
11月頭まで約6日かけて行われるこの録音は、オクタビアレコードから来年2月に発売される予定。
僕は疑いのないレスペクトをこのマエストロに抱くと同時に、バッハの和声が、心へ静かに作用する効果を噛み締めた。
音楽は凄い。