先週末、八王子の我らが工房で工房コンサートVol.2が「音色」というタイトルで行なわれた。
ピアニスト、稲岡千架さん&末永匡さんのプロデュースによるレクチャーコンサートだった。
Vol.1に引続き、フォルテピアノも使いながら、ピアノの音色を考察するレクチャーコンサート形式で行なわれた。
フォルテピアノをソロ楽器に、モダンピアノ(W.Hoffman / ベヒシュタイン製)をオケパートにしたモーツアルトのピアノコンチェルトは、古典的な響きの輪郭を体験できる、大変興味深い演奏だった。
オケパートを理解いただく為に、演奏前にお二人の友人の演奏家達が、夫々のオケの楽器の音色を紹介してくれるという、嬉しい飛び入り出演?もあり、狭い工房内はおおいに湧いた。
トローンボーン、クラリネット、バイオリン、チェロ、ピッコロトランペットと、オーケストラの楽器達の音色の紹介は、引き続く演奏の解説を解りやすくした。
コンチェルトのオケの部分をピアノで行なう演奏はしばしばあるが、ソロ楽器がピアノの場合、響きの輪郭がぼやけてしまう事がある。オーケストラの楽器達が織りなすであろう響きの色彩感とソロの楽器の主張する抑揚が、その場合、まるでベールを通して見ている絵画のように感じてしまう。聴く側が、その曲のオリジナルの楽器編成での響きを良く知らない時は尚更だ。
しかし、今回のピアノコンチェルトは、フォルテピアノとモダンピアノ(W.Hoffman)の作る響きの色彩感との対比が明確で、”コンチェルトらしい” 響きの輪郭を体験できる素晴らしい演奏だった。時代を超えて伝えられる響の輪郭に感じ入り、少ない音符で人の心を掴んで離さないモーツアルトの凄さに改めて感動した。
二部では1830年のオリジナル楽器とモダンピアノ(W.Hoffman)でシューマンを体験させていただいた。
響きのパワーは、あくまでも相対的なバランスの中で心の中に広がる。小さな響きを大切に扱えば、抑揚感は全く別の世界を空間に描き出してくれる。
シューマンが奏でたであろう響きの中での「子供の情景」は、聞き慣れた多くの演奏では感じられない優しさに満ちた響きだった。その意味を感じてから、プログラムはモダンピアノ(W.Hoffman)でのクライスレリアーナになった。
来場者の方々は、いつもと違う感動を家に持っていってくださったと思う。