今月の1枚 Juni 2022 
Bechstein (Bj.1898)で奏でるDebussy

2022年6月2日(木)

 

 

今月の1枚は、フィリップ・カッサールが1898年製造のBechsteinで録音したドビュッシー全集。「ベヒシュタイン物語」(戸塚亮一 南斗書房 1993)にも掲載されていますが、以前はADDAというレーベルから出ていたものをまとめたものだと思います。さらに近年発見された曲を(これはSteinwayを使用していますが)加えて4枚組となっています。ドビュッシーのソロピアノ曲を、作曲家存命時のピアノで一貫して録音したことはすごく意義があると思います。しかもその演奏レベルもすごく高い。

昨年のレコ芸で賞を獲った録音で、ブラームスのヴィオラ・ソナタ集でも1899年製のベヒシュタインを使用していましたが、こちらは調律の明らかな狂いがところどころで気になってしまい、初めは戸惑いました。(ずっと聞いていると慣れてくるので、好みと言えばそれまでですが)

それに比べ、このカッサールの方はすごくよいコンディション(贅沢に録音時間を使えたのか?)で録られていると思いました。今回改めて全曲聞いてみましたが、「版画」・「映像」がすごくよかったなと思いました。ドビュッシーの曲は「印象派」とよく言われ、絵画の印象派とも関係付けられることがありますが、そういう曖昧模糊とした色使いや光のきらめきを表すような部分もあれば、次第にくっきりはっきり見えてくる写実主義に似た音使いもあります。

ベヒシュタインをもっとよく知りたい方には一聴をおすすめしたいです。自分は寝る時に聞いていたのですが、非常に寝つきがよかったです。耳にすごく馴染む感覚がありました。

 

 

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