無明

2011年6月25日(土)

地下鉄外苑前の出口を上がり竹のアーチに誘われながら山門をくぐると現代の青山から受ける印象とは異なった世界に入る。

Baisouin

ここ梅窓院には、日本に最初にピアノを持って来たシーボルトの弟子として蘭学を学んだ 竹内玄同の墓もあると言うからピアノとの何かしらのゆかりも昔からあったのかもしれない。そんなご縁もあるからかどうか、このお寺の現ご住職がピアノ音楽がお好きで、改装された地下の祖師堂というホールにベヒシュタイン C-91 を設置いただいている。

ここのピアノの響きの中には不思議な暖かさを感じる。
このピアノの響きに魅せられた友人の日本在住のオランダ人ピアニストのルイ・レーリンクさんがここで今日PTNAのステップを開催されている。昨日は今日の為の調律に伺った。

調律をしていると響きの彫刻をしているような気持ちになるが、ピアノの弦は一本でも良く耳をすまして聞いてみるとウネリがある。なので、単純に音の干渉から生じるウネリを合わせるというのではなく、どういう形に響きを整えるかという事になる。これは微妙に狂わせるとか、正確に音程を合わせると言う事ではない。ただ、美しい形を探し、揃える。と言う事だ。
凄さを感じる楽器は、どういう響きの形がふさわしいのかをこちらに訴えているようにさえ感じる。これは音律の問題ではなく、音そのものの芯と、その周りにある空間のような物との間の微妙な形の事で、的確な表現が難しいが、その形は確かにここしか無いというポイントがある、と自分は感じている。

C.Bechstein C-91 at Baisouin

なので、自分からの意思があまりに強いと、ピアノから出ている声が聞こえなくなり、良い形が解らなくなる。
昨日もいろいろピアノから教えられた。帰り道はまるで運動をした後のようだった。

因に、ルイさんはCDをここでも録音されている。

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