可逆

2016年1月6日(水)

カール・フィリップ・エマニュエルは生徒にクラビコードでの練習を推奨していたというが、モダンピアノを弾く為の練習にも非常にポジティブな作用があることを今日、稲岡さんのレッスン室の調律に伺い再確認できた。
稲岡さんは、ベヒシュタインをレッスン室に使用していただいているが、この度レッスン室にクラビコードも追加された。早速レッスンでもクラビコードを利用なさった話を伺った。
クラビコードを生徒に弾かせることで、多くの問題を解決できたそう。
古典派以前の楽曲のみならず、クラビコードがもう使われなくなった時代のラフマニノフにも、というか、ラフマニノフが一番その効果が覿面だったという。

クラビコード
音と音を紡ぎながら旋律を歌い上げることを理解できる。
聞こえなかった声部が認識できた。
そして、モダンピアノは色々できすぎてしまうことで、実はちゃん自覚していなかったという事が見えてくる。等、ピアノでの演奏表現の可能性が大きく広がる。と、語ってくださった。

ピアニストの指の向こうには弦があり、弦を鳴らしている。
という当たり前でも、どこかに行ってしまったんでは?と言ってしまっても仕方のない感覚が、クラビコードに触れることでピアノの鍵盤に向かう時にも生まれる事が、皆の大きな収穫になるそうだ。

ベヒシュタイン
ベヒシュタインは、このクラビコードのDNAを持っている事が確実にわかる。
と、稲岡さんはいう。僕も同感だ。
人の感覚は常に不可逆的ではないことは歴史が証明しているが、ある意味では戻り、しかし、枠を超えた響きに感動を覚えてみたい。
今日は、二台のグランドピアノの一台は不等分律、一台は平均律で調律した。
楽器は音楽の中身を色々教えてくれる。