2015年10月14日(水)
・ベヒシュタインA185の音色は何を語るのか?
ピアノは鍵盤から弦までに沢山のメカニックが介在している関係で、弦や管楽器に比べて音を指でコントロールする意識をもちずらい楽器と言えます。
しかしこのベヒシュタインA185は、弦を指で直接操作しているような感覚で演奏を楽しむことが出来ます。立ち上がりが良く素直な音のせいか、タッチやそれを司る弾き手の心がダイレクトに音に反映されるように感じられます。そしてコインの表裏のように、実はこの感覚が人によって弾きづらいと感じられる要素の一つとなっています。
例えば管弦楽器は弦やリードを直接身体で操作しますが、まともに音を出せるようになるのにそれなりの修練が必要になります。逆に言えば、手指のコントロールと感情移入次第でいくらでも変化に富んだ豊かな音色を引き出せる、ということで、鍵盤を押せば基本的な音を出せるピアノとは、音色に対する弾き手の感覚が違ってきます。この100年前のA185は管弦楽器のように「もっと良い音色が出せるよ!」と弾き手に語っているのかもしれません。
ベヒシュタインを愛用していたドビュッシーが生きていた時代に生まれたこのピアノの音色は、本人が耳にしていた音色にかなり近いはずです。それだけでもノスタルジックでロマン溢れるお話ではありますが、この楽器の響きは現代のピアノに慣れすぎた私たちに、過去の大作曲家たちが本当にピアノで表現したかった心の奥を映し出そうとしているのかもしれません。
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