修復

2013年8月17日(土)

工房の菊嶋君の作品が一歩前に進んだのでレポートを。

 

1925年製のベヒシュタイン、響板まで完了したと昨日夕方笑顔で見せてくれた。
響板部分の割れ、響棒の剥離、高音部の駒上面の張替え、リム部分の木工補修等、工場での新品の製造の方が楽ではないか?と思える試行錯誤の連続。
工房に行く度に彼の一喜一憂を肌で感じた。

K0010135

ここ迄修復が進むと、どんな響きになるのだろうとますます着地点への関心が高まってくる。

 

フィリップ・カッサール (Philippe Cassard) の Debussy Piano Works/Decca の録音は、1898年製造の C.Bechstein を使用している。

 

1893年当時と1925年当時の構造について考えてみたい。

 

この時代のコンサートピアノはケース(ハープ部分外リムの構造が3カ所の接合タイプになっている。
この場合、外リムの木材の曲げのテンションは現代の工法による作用より低い。なのでリム部分は弱音の振動により敏感に反応し中低音が強調されやすくなる。
その他、井型の支柱構造、駒の形状並びに素材、響板のメインリブの構造、鉄骨の形状も同じなので、この期間のハープ部分の音響システム構造は同じだと考えて良い。

 

アクションの歴史で言うと1890年代は HanburgのIsermann製のヘルツタイプスプリングが主に使用されていた。1900年頃からParisのHerrburger-Schwander 製の長バネタイプのアクションが使用され始めたようなので、当時の30年での構造の違いはアクション部分に構造の違いを認める事ができる。
演奏技法の要求からマイナーチェンジがされたのであろうか?IsermannとHerrburger-Schwanderのタッチ感の違いは機会があれば比較検証してみたい。

 

修復が完了した響板の駒の部分を拳で叩くと実に豊かな響きで響板が鳴ってくれた。

 

この1925年製のベヒシュタインの響きは、フィリップ・カッサール のCDに録音された1893年当時のベヒシュタインの響きと比べどうなのか?

 

今から凄く楽しみだ。

 

次は鉄骨の塗装に取りかかかるようだ。

 

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