2017年6月24日(土)
Non canceling 調律法1
ここ数年の間、調律師の方からこんな言葉を聞いた事がありませんか?
伸びる調律
歌う調律
倍音が混じる調律
いずれも曖昧で技術的に何をしているのか謎ですが調律をしてもらった人の印象は明らかに独特の調律で良い結果が得られたと感じる方が多いようです。それぞれ工夫を凝らした「何か」がされているというわけです。
ちょっとここで「先進的な調律」とは何かを考える前に「なぜ現状の調律方ではダメなのか」について述べてみます。
これは調律師の道を志した人は必ず通る道ですが調律技術の基礎を学んで初めて仕事を始めた時、お客様のこんな言葉に脅えます。
「すみません、この音合ってないんじゃないですか??やり直してもらえますか?」
それは一通り調律をさせていただいてピアノを依頼者に引き渡し調律のチェックをしてもらう時に起こります。
このダメ出しに対して完全に満足のいただける様に出来なければ料金も支払っていただけませんし、最悪の場合、調律師を変える様に言われます。これは仕事として最も避けなければならない事です。
「音が合っていない」という事はただ単純に技術的に未熟な場合はちゃんとやれば良いだけの話ですが、そうでは無い場合もあります。実はそこが大変悩ましい問題です。
ピアノの音というものは1音を3本の弦で同時に発音していますから「合っていない」事はユニゾンの事を言っています。
非常に悩ましいのは3本の弦、それぞれ1本で鳴らしてみると、「いかにも合っていない音」を出している弦があるのです。
音が合っていないとは2本以上複数の音の間で起きる事ですが、ピアノの場合1本の弦で自ら「合っていない様な音を出す」弦が
存在します。
3本のユニゾンの中にその弦が1本あった場合、理論的には音を合わせても「合っていない様に聞こえる」ユニゾンが出来上がるわけです。それは容易に想像が出来るでしょう。
しかし、それをお客様に言ってみたところで「だだの下手くその言い訳」にしか聞こえないのです。ましてや前の調律師はきちんと合わせた既成事実があると「合っていない様に聞こえるユニゾン」はただの下手くそにしかならないわけです。
そして、それを直す事が出来なければ仕事を失う事になります。
不思議な事に多くの調律師はこの問題を乗り越えて「合っていない様な音を出す弦」が混在する3本のユニゾンを合わせると「完全に合っている様に聞こえる」様に合わせる事に成功しているのです。それはプロとして当然、アマチアで調律する人には完全にマネのできない一つの特殊技術であると思います。
「合っていない様な音を出す弦の音」を跡形もなく完全に合っている様に3弦のユニゾンを合わせる!それは一見神業の様でありすばらしいプロ調律師の技術ですが、お客様との関係での営業上必要に迫られて開発された技術ですが、必ずしも「音楽的な音」では無い音である事を知らなければなりません。
本来自然になっている音を「消し去って」いるわけですから何か良く無い事が起きているのが想像できると思います。
相殺、干渉、撲滅、フィルタリング、何かその様な類の技術で聞こえない様にしているはずです。それは当然の事ながら「楽器が鳴らない方向に行きます」
先進的な調律を志し実現している人は東京だけでも何人も現れていますがこの問題を解決し、それでいて「どう聞いても合っていない様には聞こえない」事をクリアしています。
それは具体的に何をどうやっているのでしょうか?