第三帝国のピアノと呼ばれたベヒシュタイン

2015年9月22日(火)

「ナチスの財宝」(講談社現代新書)を読んでいます。ナチス・ドイツが占領などして没収した財宝がどこかに隠されていて、今も行方がわからず探し続けられているという内容で、特に元々ロシアにあった「琥珀の間」の行方が語られています。実にいろいろな人、国々が戦後からすぐに探し始めています。
日本で言えば「徳川埋蔵金探し」という感じでしょうか?
ナチス総統のヒトラーが、美術をはじめとして芸術にもうるさかったことが災いしているのですが、今でも行方知れずの絵画があり、また裏ルートで取引されているのがバレたり、元の持ち主と今の持ち主でもめたりとなかなか複雑です。

見つかる可能性はもちろんゼロではないですが、見つかった場合、見つからなかった場合、どちらも相当大変なことになりそうです。
さて、ナチス・ドイツにも重用され、「第三帝国のピアノ」とも呼ばれたベヒシュタインですが、戦争で工場が破壊され、戦後の復興もかなり制限されれました。べヒシュタインの暗い過去とも言えるのですが、今日の隆盛からはなかなか想像できないのではないでしょうか? 楽器には罪はもちろんないですが、戦争によって実にさまざまなものが失われます。

ドイツはその昔からヨーロッパ中央に位置しているので、多くの戦場になっています。ピアノをはじめとした楽器製造職人もドイツからイギリスやパリへ逃れたりしています。そして古い楽器があまりドイツに残っていないのもそこに起因します。
今、ヨーロッパで大きな戦争はないですが、シリアでは多くの文化遺産が故意に破壊されています。そして何より人間の命が失われています。日本は島国で難民が押し寄せることはなかなかない(と思います)ですが、ヨーロッパでは日々その対応で大変になっています。ヨーロッパの楽器を扱っている者として、無関心ではいられません。今後も注視していきたいと思います。