社長のブログNo.25「ワンダーフォーゲルの語源」

2014年2月14日(金)


私は、ピアノ屋であり、歌は門外漢である。しかし、37年間(2011年まで)ドイツに住み、ドイツリートの世界も垣間見る機会も多かった。ある時期はオペラの会員でもあった。

 

ドイツリートと言えば「シューベルト」。シューベルト言えば「旅」といえる。

 

シューベルトの歌曲を理解するにはその時代背景を知って歌うのと、知らないで「発声法と発音と詩」を追いかけて歌うのとでは、歌としてでてくるものが違う。
聴く側にとっても、詩が歌声ににじみ出ているかどうかの受け方や判断が異なる。

 

14~5世紀頃に、中世の領主の下でコントロールされていた、夫々の手工業が一つの職業として横断的に定着してくる。「親方」マイスターのところで修行をした「徒弟」は一定の年月を経て「職人」というレベルに達する。更に、実力をつけるために、次のマイスターを訪ねる。そこで、「親方」は訪れてきた「徒弟」を終えた「職人」に寝食を与え、仕事を教える。一方「職人」まだ未熟ではあるが労力を提供する。訪問した親方のところで断られることもあったであろう。3日間のこともあれば半年の滞在を許されることもあったであろう。
当時の手工業の職業としては、家具つくり、屋根ふき、煙突掃除、鋳物で扉や門を作る、鉄で武器を作る職人など、30や50の手工業の職人たちがドイツ中を旅する。冬のドイツを歩いて又は馬車で旅するのである。
そこには、この旅人となる多感な青年の、悲哀、喜び、恋、孤独も自然の素晴らしさも有り、いろいろな経験や体験をしつつ諸国を漫遊する。
ドイツの職業訓練は、日本式の「技は盗め」ではなく、「技は徹底的に教え込め」というやり方である。厳しい親方もいたであろう。滞在先での恋も有ったであろう。5月から6月の本当に素晴らしい自然もある。
この、修行中の職人たちのことを“徘徊する鳥”つまり“ワンダーフォーゲル”と呼んだ。

 

当時、あらゆる手工業の何千、何万人の職人=ワンダー・フォーゲルが、ドイツ中の森を徘徊していたのである。
この当時の社会制度的背景を知って「シューベルト」の“冬の旅”、“美しき水車屋の娘”などを聴くと、“シューベルトの世界”がよく見えてくる。

 

小社の副社長、加藤正人は、ドイツの手工業の一つ「ピアノ製作マイスター」の肩書きを持つ。「ピアノ調律師へのみち」と題する小冊子(約20ページ無料)がある。興味のある方は申し出て下さい。

 

補足:「マイスター」の上に「Sachverstaendiger」という肩書きもある。この資格を取ると、法律的に公平な判断ができるという裏づけとなる。例えば、裁判上の手工業製品に関する係争があるとすぐ、この「公定判断者の職業資格を持つ人」が裁判所に呼ばれて、客観的な判断を示す。こういう制度があるから、裁判の判断も早いし、偏りにくい。各職業の神聖な権威というか、職業に対する責任意識の強さの表れである。

 

筆者は、ドイツ滞在37年のユーロピアノ代表取締役

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