【連載】ベヒシュタイン物語 第3楽章 ベヒシュタインはこうして作られる

24,《材料・製作過程》

 

24-9〈アグラフ AGRAFFEN〉
弦はチューニングピンと鉄骨の上のヒッチピンによって張られています。そして実際に振動する部分は、一方は駒ピンで駒と密着されもう一方はチューニングピンの前で、鉄骨上にある金属により傾きがつけられています。駒とこの金属によって弦に圧力が加えられ、駒との密着力が増し、振動を確実に駒から響板へと伝えることができます。この金属がアグラフと呼ばれるものです。音ひとつに対して、中低音から高音は力強さと響きの豊かさを出すために複数の弦が張られていますが、アグラフは一つの音にあくまでひとつのものになっています。これは音それぞれの干渉を避けるためと、それぞれの弦に理想的な傾きをつけるためなのです。
ベヒシュタインのコンサートシリーズは、最高音部まですべての弦が、アグラフにより固定されております。このアグラフは、すべて特殊組成の真鍮からなり、そして中央には鋼鉄製の針金が通っており、また、鉄骨にしっかりとねじ込まれております。また、高音セクションには音のエネルギーロスを少なくして、フォルテシモに際して、音色に力強さを与え、そしてその音の伸びを失わぬようにするべく、特に中低音部より格段に大きなものを使用しております。

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24-10〈チューニングピン STIMMWIRBEL〉
弦が巻きついていて、その張力を変化させて音程を合わせる働きをするのがチューニングピンです。調律の度に動かされるのですから、耐久性が何よりも重要なのは言うまでもありません。また弦には平均で一本70キログラムの張力がかかっていますから、これに対する十分な堅さが必要であり、曲がったりねじれたりしてしまっては困ります。
ベヒシュタインのチューニングピンには、最高級の鋼鉄にすべてニッケルめっきしたものを使用しています。長年にわたり、相当数の調律に十分に耐えるものであることは、言うまでもありません。

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24-11〈弦 SAITEN〉
弦に要求されることは、しなやかさと密度の均一さ、断面の真円さです。容易に伸びたり切れたりするようでもいけません。こうした条件を満たした弦は、澄みきった豊かな響きを約束します。ベヒシュタインでは、「レスロー」ブランドのものが使用されています。そしてバス弦は、その芯線の上に電解コーティングされた純度の高い銅線が巻かれています。それぞれのモデルにあった巻線が、ベルリンの工場で一本一本巻かれています。低音弦の振動エネルギーを理想的な状態にするには、巻線を製作する際、巻き初め・途中・巻き終わりでの巻くスピード(回転数)や銅線・芯線それぞれを引く強さが大切です。こうして製作された弦でも、不適合な倍音を出したり、音に「うなり」を生ずるものは、調律・整音時にすべて交換されています。

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つづく

 

次回は24-12〈弦設計 MENSUR〉
をお送りします。

向井

 

注: この内容は1993年発行のベヒシュタイン物語(ユーロピアノ代表取締役 戸塚亮一著)より抜粋しておりま す。なお、この書籍の記載内容は約20年前当時の情報を元に執筆しておりますので、現在の状況・製品仕様と異なる点も多々あります。予めご理解頂けますよ うお願い申し上げます。