こんにちは。
東京本社ショールームの佐々木です。
今日は、前回のベヒシュタイン工場見学ツアーのレポートの第2弾を書きます!
ドイツ出張から帰ってきて、もう十日ぐらい経つのですが、人間の記憶とは怪しいもんで、すでに結構忘れてしまっております。このままでは、肝心の工場見学の部分をどのくらいレポートできるもんだか、わかったもんではありませんが、小さな灯火のようになってきている記憶を頼りに書いております。
いつも自分の話ばかりで恐縮ですが、僕はとても短期のメモリーの容量が少なくて、何でもかんでもすぐに忘却の彼方へと行ってしまいます。仕事をしていて、「あー、忙しい忙しい、やらなきゃ、やらなきゃ」と常日頃思うのですが、「はて、何をやらなきゃいけないんだったけ?」と思うことがしばしばあります。
「うーん、俺、何しようとしてたんだっけか?」「何だったっけ、何だったっけ」と考えているうちに、時間がどんどんたち、夕闇が降りてきて、気がついたら
「あっ、帰る時間だ。帰らなきゃ!たしか、今夜は肉じゃがだとか妻が言ってたっけ。」
なんてことが、しばしばあります。それで、三日後くらいにふと思い出して、
「あー、まずい。あれやらなきゃ、やらなきゃ。すっかり忘れてた。もう締め切りが近づいちゃった」
なんて焦ったりしております。
けれども、そういう時に限って
「あれ?何やらなきゃいけないんだったっけ? 今さっき思い出したんだけどなぁ」
なんてことになり、それを思い出そうともがいているうちに
時間がどんどんたち、夕闇が降りてきて、気がついたら
「あっ、帰る時間だ。帰らなきゃ!たしか、今夜はカレーうどんだったような気がするな。あんまり遅くなったら、うどんがのびてしまう。こりゃいかん、早く帰らなきゃ!」
ということの堂々巡りで、いつまでたっても仕事がはかどらない、なんていうこともないわけではありません。
このような、鳥のようなメモリーしか持ち合わせぬもんですから、十日前の出張のことを思い出してブログに書くという作業も一苦労なんです。
しかし、会社のお金で行ってきたドイツ旅行、もとい、ドイツ出張ですから、しっかりレポートせねばなりません。このまま、何の総括もせずに進んでしまうと、結局何も得るものがなかった出張になりかねません。それはいかん。それだけはいかん。
それで、今日はドレスデン初日の夜についてです。
前回の記事にも書きましたが昼は、ドレスデン市内のピアノ店を見学した後、市内観光をしました。とても美しいドレスデンの街を、ツアー参加者の皆さんと散策しました。
「佐々木さん!クリスマスマーケット行こうよ!」
とか、
「佐々木さん!本場のビールを飲もうよ!」
とか、
「佐々木さん!本屋さんに入ろうよ!」
とか
「佐々木さん!聖母教会のてっぺんまで登ろうよ!」
とか、お客様に連れられるがままに、ドレスデンの旧市街地を歩き回りました。これでは、どちらがお客様で、どちらがツアーガイドなのか・・・・。
ドレスデンには美味しいシュトーレン屋さんがあります。シュトーレンとは、クリスマスの時期に食べるドイツの焼き菓子です。ウィキペディアによると、
シュトレンという名前はドイツ語で「坑道」を意味し、トンネルのような形をしていることからこの名前がつけられた。生地には酵母の入った生地に、レーズンとレモンピール、オレンジピールやナッツが練りこまれており、焼き上げたケーキの上には真っ白くなるまで粉砂糖がまぶされている。その形が幼子イエスを産着で包んでいるように見えると言われている。
これも、ツアー参加者の方からの受け売りですが、ドレスデンはシュトーレン発祥の地とも言われているそうです。僕も買って、すぐに食べてみましたが本当に美味しいんです!
それで、夕方にお客様とシュトーレンを食べながら
「今夜はどうしましょうかね?何か美味しいものでも食べに行きますか?」
などと、話しているうちに、ふと思い出し、
「そういえば、今夜は、ゼンパーオーパーでLa Bohemeやるそうです!昨日、インターネット見たらまだ残席があったので、一緒に観に行きませんか!」
と言ったところ、
「私も行きたい!」
という、お返事をいただき、総勢7名でゼンパーオーパーに行くことになりました。
ゼンパー・オーパー(Semper Oper)は、ドイツ・ザクセン州の州都ドレスデンにある州立歌劇場の愛称。東ドイツ時代は国立の歌劇場でドレスデン国立歌劇場と呼ばれたが、現在はザクセン州立である(旧称で呼ばれることも多い)。専属の管弦楽団は、シュターツカペレ・ドレスデンの名でコンサートや単独録音も行い、非常に人気が高い。(ウィキペディアより)
すでに、チケットを取ってこられた方もいらっしゃいましたが、当日「行こう」ということになった方々もいらっしゃいましたので、当日券を取らねばなりません。
とりあえず、ゼンパーオーパーのWebサイトを見てみるも、昨日まで予約できたページからチケットが予約できない!空席状況もわからない!という状況。これは困った。
そこで、とにかくゼンパーオーパーに電話をかけてみました。
僕はドイツ語は全く喋れません!生まれてこのかたドイツ語を話さねばならない状況に置かれたことなど一度もありませんから、困ってしまいました。
「あー、学生時代ドイツ語選択しておけばよかったなー」
と、強く思いました。
私は学生時代フランス語選択でした。フランス語を選択しましたが、フランス語も全く話せません!フランス語で2回もダブったというのに、全く話せません。フランス語の必要性を全く感じなかったからです。
それでは、なぜ、フランス語を選択したか。理由は単純です。入学した時に、第二外国語の選択を迫られた時があって、その時に地元北海道の友人に相談の電話をかけました。どの語学を選択すべきかを相談しました。
「佐々木くん、そりゃーフランス語だべさ。フランス語のクラスが一番女の子の比率が高いべさ」
と、彼が言うので、迷わずフランス語選択にしました。
それが、今にして思えば、ドイツ語を選択しておけばよかった!!なぜ、あの時フランス語にしてしまったのか。将来ドイツのピアノを扱う仕事に就くなどとこれっぽっちも思っていなかったのがいけなかった。志が低かった。
それでも、仕方ありません。チケットを取るためには、ゼンパーオーパーに電話をかけるしかありません。
とりあえず、かけてみました!
かけてみたところ、何やら、聞き取れないドイツ語の自動音声がなります。当たり前です。ここはドイツです。日本で魚屋に電話をかけたら魚屋のおばちゃんが日本語で応対するように、ここドイツでオペラ屋に電話をかけたらドイツ語で応対されます。
しかたねえな、こりゃ。まぁ、何とかなるべな。と思っていたら、電話が切れてしまいました。
その後、何度かけても電話が切れてしまいます。
「ああ、これは、今忙しいから電話つながりません、後でおかけ直しください。というやつだろうな」
と思い、時間をおいてかけてみました。何度もなんどもかけているうちに、ドイツ語のガイダンスの後に英語のガイダンスが流れてきました。やっぱり
「今忙しいから電話つながりません、後でおかけ直しください。」
という、ガイダンスでした。しかし、その後に、「電話をかけても繋がらない場合はemailを送ってください」というメッセージが聞き取れました。そうか、はじめっからメールしておけばよかったんだ。。なんでそんなことに気づかなかったんだろう。
早速、メールを送ってみたところ、すぐに
「今夜はまだ全てのカテゴリーに残席があるから、直接ゼンパーオーパーの窓口に来て買ってくれ」
との返事が来ました。ヨカッタヨカッタ。
それで、観てきました。La Boheme。
とても素晴らしかったです!
まず、劇場が素晴らしい。
なんだか、映画でしか見たことがないような歌劇場です。ドレスデンの、そしてドイツ歌劇の歴史を感じます。
そして、演出が奇をてらわない古き良き懐かしきラ・ボエームだったのも良かったです。
何よりも、音楽が素晴らしい。
僕は、初めてのドイツでその日は朝からガチガチに緊張しておりましたが、ラ・ボエームを聴いていると、何だか自宅の書斎の椅子に戻ってきたようなリラックスした気分になりました。目の前で繰り広げられている劇を、肩肘張らずそのまま楽しめる。
始まる前は、凄い劇場を見て浮かれちゃっていたのに、幕が上がると一気にラ・ボエームの世界に引き込まれて、休憩を含めて約2時間があっという間に過ぎてしまいました。
なんだか、夢を見たかのような感覚でした(居眠りしていたわけではありません)。
そして、オペラが終わった後、お客様と一緒にホテルへ向かうタクシーの車窓からは、ドレスデンの旧市街の夜景が一望できました。
何て美しい夜景なんだ!
オペラを堪能して、劇場を出てこの美しいドレスデンの旧市街の夜景に囲まれる感覚は、どう頑張っても日本では味わえないのではなかろうか。ヨーロッパでどんなに頑張ろうと谷崎潤一郎の世界を味わうことができないように、日本ではどんなに頑張ってもここドレスデンの世界は味わえないのではなかろうか。と、ふと、思いましたが、考え直しました。
いや、ここドレスデンにいても、谷崎潤一郎を読めば、谷崎潤一郎の世界に浸れるではないか。
私だって、一度も関西に住んだことはないけれども、「細雪」の世界を堪能したではないか。だとしたら、東京の片隅でも、ここ、ドレスデンの世界を堪能することができるはずだ。
では、どうすればいいのだろうか。
音楽だ。
音楽に浸れば、ここドレスデンの街に舞い戻ることができる。
などと、ちょっとキザなことを考え、その夜は寝ました。
それで、今、自宅の書斎でデッカ盤の『歌劇「ボエーム」全曲』の某レコードを聴きながら、このブログを書いております。
かすれてきた記憶の中から、ドレスデンの夜を思い出して書いております。
長くなってしまいました。すみません。
次回は、もしかしたら「工場見学」までたどり着けるかもしれません。