ピアノを良い音にするために

2018年1月10日(水)

皆さんは料理は得意ですか?私は得意では無いのですが、料理は好きなのでごくたまにします。どうせ作るなら美味しく作りたいですよね。そのために美味しい料理を作る要素をいくつか挙げてみようと思います。まず料理の出来上がりをイメージする事から始まって、食材の選択、下ごしらえの方法、調理方法の選択、それぞれの食材の調理時間(タイミング)の決定、味つけ、そして最後に盛り付け、などパッと思いついただけでも色々出てきます。

なぜこのような事を話したかというとこれら美味しい料理を作る上で大事な要素は、そっくりそのままピアノの修理、調整をする時に当てはめる事ができるからです。

料理の出来上がりイメージはピアノの修理後の音をイメージすることに似ています。食材の選択は修理パーツの選択、下ごしらえは、パーツをそのピアノの種類、サイズなどに合わせて加工する事、調理方法の選択はそのピアノにもっとも適合する修理方法を探し選ぶ事でしょうか。調理時間は例えば一台のピアノについての色々な修理をそれぞれどのタイミングで行なって行くかを決めることに近いかなと感じます。味付けは、ピアノの修理ではこれこそ一番大事だと思われる音作りに変えられるのではないでしょうか。盛り付けはピアノの見た目を整える事、例えば外装を綺麗に磨いたりする事ですかね。このような感じでピアノは修理されていきます。

ピアノ修理というと一般の方にはあまり馴染みがなく何の為にこのような事をしているのか想像がつかないかもしれません。でも実は何も特別な事をしているわけではなく、とにかく美味しいものが食べたいという潜在的な欲求から料理をするのと同じで、弾きやすくて、いい音がするピアノにしたいので修理をするのです。

さて料理にも簡単なものから難しいものまで色々あるように、ピアノでも修理、調整するのに難しいメーカーがあります。それがベヒシュタインであるように私は思います。長くなりますので細かな理由については今後またぜひ説明させて頂きたいですが、一言で言ってしまうと、いい音、いいタッチであると感じる範囲が極めて狭いということです。範囲というより点であるように私は思います。

例えば他のメーカーのピアノである程度のところまで作業を行ったとし、大方の人が満足するであろうレベルがあったとします。しかしベヒシュタインにおいてはそのレベルでは未だ大勢の人達を満足させることは出来ないのではないかと私は思っています。どうやらベヒシュタインはさらにそこから修理、調整のレベルを上げる必要がありそうです。それはとても時間がかかりまた難しい事ですが、しかしそのポイントに入ったベヒシュタインは他のメーカーにはだせない音色を聴かせてくれます。人の心を動かすような感動をもたらしてくれるピアノとなってくれるのです。

写真では今では製造されていないベヒシュタインのS型というモデルの修理前と修理後の写真を載せてみました。日々、上に書いたようなことを目指しベヒシュタインの修理をしています。