ピアノの為の空調管理・除湿について

2018年5月1日(火)

こんにちは。技術部の向井です。

お客様とお話ししていて、よく温度・湿度管理についてご相談を受けます。

ピアノはご存知のように材料として木材を沢山使っていまが、木材と言う材料は、温度・湿度の影響を受けやすく特に湿度の影響は強く受けます。湿気ると木は膨張し、乾燥すれば収縮します。また、良質なピアノ程木材をより多く使っていて、それだけ温度・湿度の影響は受けやすいと言えます。さらには、“音”を最重要視するが故に、木材を湿気から保護する目的での塗装を最小限に留めているので益々デリケートになります。日本という国は、梅雨時の多湿期と冬場の乾燥期の変動差が大きく、この様な木材を使った楽器にとっては負担の大きい環境の国と言えます。木材の変化はピアノ自体の変化となり、結果調律や調整の狂いとなって表れてきます。

日本のような年間の変動差の大きな国での管理のポイントとしては、その変動差をいかに少なくする事が出来るか。という事になります。そこで、必要となってくるのが多湿期での除湿と乾燥期での加湿です。

まもなく、ムシムシジメジメとした梅雨が来ますが、おそらく多くのお宅では除湿が必要となる時期ではないでしょうか。

除湿が必要な場合は、エアコンの“ドライ”運転でも良いのですが、より効率的に湿度をコントロールするには除湿器をご購入頂き運用していただく事をお勧めいたします。

そこで、今回は除湿器をテーマにお話をしたいと思います。

除湿器といっても、その除湿方式によって3種類の除湿器があります。

1、コンプレッサー方式

2、デシカント(ゼオライト)方式

3、ハイブリット方式

1のコンプレッサー方式は、エアコンの冷房と同じ仕組みで空気を冷やして空気中に含まれる水分を結露させ水として取り出す方式になります。コンプレッサー式のメリットはその除湿能力の高さです。また夏場のように気温が高いと除湿能力が高く、消費電力も小さい傾向にあります。冬場には除湿能力が落ちるうえ、コンプレッサーを備えるため、動作音がやや大きいのがネックです。

 

2のデシカント(ゼオライト)方式は、乾燥剤のゼオライトで湿気を除去する仕組みで、吸着した水分はヒーターを通して集めます。コンプレッサー式とは違って冬場でも除湿できるのがウリですが、室内の温度を上げてしまうので夏場の利用には向きません。また、消費電力もコンプレッサー式の2~3倍と大きくなります。

 

3のハイブリット方式は、夏場はコンプレッサー式、冬場はゼオライト式で動作するいいとこ取りのタイプです。年間を通じて快適に利用できるのがメリットです。デメリットとしては、本体が大きめになるうえ、価格が高くなる傾向にあることす。

 

除湿が必要な時期は主に気温湿度共に高めな6月~7月の梅雨時が中心となると思いますので、必然的にコンプレッサー式となります。基本的に梅雨時~夏場のみの除湿であればコンプレッサー式を購入いただければ間違いありません。お宅によって冬場でも湿度が高く除湿が必要な場合はデシカント(ゼオライト)方式が選択肢に入ってきますが、この方式は温風が出るので室温を上げてしまう為、夏場には向きません。年間を通して除湿したいならば、3のハイブリット式であれば両方式の良いとこ取りなので、一番のおススメです。

 

もうひとつ、除湿器を選ぶうえで重要なのポイントが“湿度設定”を任意で出来るか否かです。

ピアノを管理するうえで適正な湿度は一般的に55%前後と言われています。設定項目が自動、強、弱のみの機種ですと、常に作動しっぱなしになり場合によっては除湿し過ぎになってしまう可能性があります。この55%を任意に設定できる機種であれば、常に最適湿度をキープ出来るので、より理想的な湿度管理が出来る為お勧めできます。

 

任意の湿度設定が出来る機種

 

 

 

任意の湿度設定が出来ない機種

 

 

さらに詳しく調べてみたい方は、ネットで“除湿器 種類”と検索すると沢山説明しているサイトを見る事が出来るので参考になさってみてください。

また秋くらいに今度は冬場の乾燥対策の為の加湿器についてご紹介したいと思います。

では、また。

 

ユーロピアノ技術部 向井