お世話になった本

2018年4月1日(日)

あの本は一体何処に行ってしまったんだろう?長年行方不明になっていた本が物置の奥から出てきた。何故こんなところに・・・、ともあれ出てきて良かった。駆け出しの頃、ずいぶんと世話になった本。
PIANO SERVICING TUNING & REBUILDING。何処でどう手に入れたのか、すっかり忘れてしまった。著者のARTHUR A. REBLITZは、写真の人。初版発行が1976年なので、42年前のかなり時代を感じさせる写真だが、未だに判を重ねているらしく容易に手に入る。97年のバージョンから改定はされていないようだ。現在では、遥かに情報量の多いピアノの技術書が発行されているし、その内容も新しい。
写真の本は多分84年版だと思うが、今読み返しても十二分に参考に出来る内容だ。よく覚えているのは、スピネットタイプのピアノアクションの取り出し方。スピネットタイプと呼ばれる背の低い(約1m)アップライトピアノは、ご存知のように鍵盤筬の奥にウィッペン部分が落ち込んでいるドロップアクションが入っている。アメリカ製のドロップアクションは、鍵盤の後端にウィッペンから伸びたワイヤーが一本一本繋がっていて、アクションを取り外す際、ワイヤーを鍵盤から外すので、ワイヤーがバラバラになってしまい、取り外しができなくなるのだ。ある日、当時の同僚の調律師から連絡が来た。スピネットのアクションが外せなくなってしまったというのだ。駆けつけてみると、なるほど、ワイヤーがバラバラになって、鍵盤筬の下にはまり込んでいて二進も三進もいかなくなっている。そこでこの本に載っていた方法を試してみたところ、うまく取り外せたのだ。何のことはない、長い紐か針金を左右のブラケットに渡してワイヤーを固定するだけの事なのだが、この本から情報を得ていたおかげで、すぐに解決できた。ドロップアクション自体、めったにお目にかからないので前知識がなかったら難しかっただろう。因みに日本製のドロップアクションは木製のケージのようになっていて、紐でまとめなくても取り外せます。それなりに面倒くさいけど。
それと、弦の結びかな。何度か切れていた弦を結んで直したことがある。それもこの本で知った事。ただどこでも出来るわけではなくて、弦が太いところ所はかなり面倒。低音の巻き線とかその場しのぎになりそうだけど、伸びしろとか考えるとベアリングで切れたところはかなり難しい。チューニングピンのコイルのところで切れた場合は、出来る可能性は高いが、最低音の弦が太いところはやっぱり難しい。新しく巻いてもらった方がベターでしょう。 他にもこの時代ならではの内容もありで、自分にとっては、価値ありの一冊でした。他にも紹介したい本があるけど、また別の機会に、ではでは。

早川