ベヒシュタインの王冠

2022年2月12日(土)

 

以前弊社のオウンドブログに掲載したものをこちらに再掲載いたします。

「ベヒシュタインの王冠」 2021.02.10

「箔をつける」という表現が日本語にあり、貫禄が増すとか高い値打ちがつく、評価が高まるといった意味で使われます。ドイツ語でこれをどう言うのかを辞書で調べてみたら、”krönen”=「王冠を戴かせる」と出ていました。

王冠は、ヨーロッパは言うに及ばず、日本でも人気があります。インターネットで探せば無数に王冠を採用しているロゴがあります。キリスト教の影響だと思いますが、ヨーロッパの歴史において戴冠の名の通り、冠を授かる、戴くことは名誉であり、その地位を知らしめる、確立する、何より視覚できるという意味で重要です。個人的に戴冠で思い浮かぶのは、ナポレオンが妻ジョセフィーヌに教皇か枢機卿を背に冠を授けるダヴィットの絵画です (日本では名前の一部を継がせたり、領地や何か宝物をあげるとかでしょうか?)。

さらに王室ネタは古今東西問わずに人気があり、ドイツでも他国のロイヤルファミリーだけを載せた新聞がよく売れていました(現在ドイツに王室はなく、他国の王制にあこがれがあるとも聞きます)。

この「王冠」が、ベヒシュタインのロゴマークにここ十数年来採用されています。その前からもコンサートグランドのサイドやカタログには不定期に付いてはいましたが、楽器の鍵盤蓋や棚板正面などにしっかりと定着したのは2005年頃からだったように記憶しています。当初は何か取って付けた感じで、王冠の無いすっきりした “C.BECHSTEIN” がかっこいいなと思っていましたが、逆に今は無いとしっくりこない。王冠をトップにしてロゴが二等辺三角形となり、マークとしての座りというかイメージもいい。

ベヒシュタインがそれを意識的にしていることは明白(と思う)ですが、他のピアノメーカーも似たようにマークを使用しています。スタインウェイは竪琴をデザインし、ベーゼンドルファーは亀の子文字(ひげ文字とも)のBを採用、ヤマハは音叉がデザインされています(そのうちファツィオリも何かしかけてくる気がします)。

「王冠を戴かせる」=「箔をつける」で楽器自体の本質的なものが変わるわけではないのですが、受けるイメージは確実に変わった(と思う)。ベヒシュタインは1853年の創業以来、プロイセン王国や英国、ロシア、その他の王室や貴族の御用達(Hoflieferant)として、またリストやドビュッシーをはじめとするピアニストや作曲家らに楽器を弾いてもらい評価、愛用されてきました。それらをイメージさせる王冠をロゴマークに組み入れることによって正統な、高貴な、選ばれし楽器であると一般に認識してもらう。

そしてそれに見合う、値する楽器である、と自分も日々感じ、そして信じていくために何ができるか?と考えています。

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