前にブログで書いたが、半年程前に声楽の録音にベヒシュタインを秩父ミューズパークに持ち込み仕事をさせていただいた。声楽はテノールの中鉢聡さんで、ピアノは瀧田亮子さんの演奏である。
CDをお聞きになられたお客さんからの、声楽とベヒシュタイントーンの絡みの良さを高く評価して下さる声に一昨日励まされ、ブログでこの録音について後で詳しくと書いたのにまだそのままだった事を思い出した。
録音では、声とピアノの音のバランスを取るのにマイクの位置決めにエンジニアの方は時間をかけていらしゃたが、CDになった音を聴くとエンジニアの仕事の上手さを認識できる。
クラッシックの録音は、スタジオでなくホールでされる場合が多い。ホールの自然な響きを演奏者は体感できるから、パフォーマンスに良い意味で影響されるからだ。アンサンブルはなおさらである。
楽屋裏話になるが、録音当日は寒かったのだが、ホールのエアコンの音をマイクが拾ってしまうと言う事で、エアコンを消して収録が行われた。なので、時間の経過と共に徐々にホールの気温は下がる訳で、中鉢さんも瀧田さんも、途中体を温めながら(ピアニストは指先を)の録音進行だった。スタジオの中では、そう言う意味での環境は抜群に良い訳だが、パフォーマンスを重視すればこそのチョイスなのだろう。
さて、ピアノの響きの話だが、ベヒシュタインは「透明な響き」「声のような音の輪郭」を製作のコンセプトにしている。なぜ、ピアニストでベルリンフィル初代指揮者のハンス・フォン・ビューローはベヒシュタインを好んだか、声楽や弦楽器の伴奏で体験するとその真価が良く判る。
グルベローバはフリードリッヒ・ハイダの弾くベーゼンドルファーと絶妙に美しい響きの輪郭を作るが、同じ意識で改めてこのCDを聴くと、伴奏ピアニストのアンサンブルが造形する響きへのこだわりを感じる事ができる。
中鉢聡さんのCDプリモ・バーチョは、ミューズエンターテインメント – Lohas Classicで今月10日から店頭で発売されている。