最近、ベヒシュタインの販売時に、国産グランドピアノの下取りが立て続けにあった。以前は、自分たちで修復をする余力もないので、海外に輸出する業者さんに転売するという事が殆どだったが、そろそろ、我々の工房でも下取り品を修復し再販してしまおうか。という事になり、これら下取りピアノを八王子工房で修理した。
ユーロピアノの工房では研修制度を取り入れているが、研修生として約10年前に入ってきた人たちが一人前の技術者になり、新人に堂々と物を教えられるようになってきた。
「響き」という目に見えない代物を扱っていると、どうにも割り切れない事が出てきたりする。そこで必要になるのが「勘」である。
勘所はどうにも教えられも、教えもできないもので、自らの試行錯誤から発見する意外にない。それには時が必要である。
先日は、最近外回りの調律もし始めたNさんが、下取りのYamaha S6を再販用に修理をした。彼女は、過去ベヒシュタインやスタインウエイの修理に何台も工房で従事しているが、逆に弦交換からの国産のピアノのオーバーホールをあてがわれたのは殆ど初めてと言ってもいいのではないだろうか。
修理は進み、決して雑に終わらせたのではなく、いつもより早くNさんは作業を完了させた。
機械化量産で生産された物は、寸法が正確なので作業そのものに工夫があまり必要ない。なので、そもそもいつもの難しい作業で勘が鍛えられた人がすると、思いがけずさくさくとできてしまうのだ。
交換部品は、いつもの修理で使っているドイツ製を使用したのか、整音が終わり、チェックを促したNさんの目の奥には自信を感じた。
Nさんたちが修理した国産グランドピアノの再生品。八王子工房でお試しいただける。
ちなみに、上述のグランドピアノは販売先が決まったようだ。