感銘

2018年1月27日(土)

多くの音色の点が空間に置かれ、それぞれに色彩の強弱がつくと絵画のような立体が空間に浮かび上がるような錯覚を受ける。立体的な響きの造形を空間に創造する工夫を、ドビュッシーは彼の作曲技法の中でしていたんだな、とスピーカーからプレイバックされる音を聞き、つくずく、楽曲に内包される、響きの造形意欲に感じ入った。

低音域・中音域・高音域の3つのレジスターの響きが違和感なく完全に溶け合わないことで、同一系の色で繋げられる一本のラインを浮かび上がらせ、その位置が前後に変化するように聞こえる。

今年は、ドビュッシーの没後100年というメモリアルイヤーになる。その記念ということで、ドビュッシーの研究家としても知られる、​青柳いずみこ​さんがCDを録音された。その、特別なCDの演奏楽器として1925年に製造された、ベヒシュタインのフルコンサートピアノをお選びいただき、コジマ録音さんが録音会場に選んだ相模湖交流センターに八王子工房から運び入れた。ドビュッシーは1818年3月に亡くなっているが、1925年製造のBechstein の構造は、ドビュッシー存命中のピアノと同じと言っても過言ではないだろう。

ドビュッシーはベヒシュタインを高く評価したということで、ベヒシュタインのカタログにも紹介されている:

Composer Claude Debussy highly prized Bechstein pianos and made the statement, “Piano music should only be written for the Bechstein.”

ドビュッシーがこのように述べる理由が腑に落ちるベヒシュタインの独特な響きの効果が、モニタースピーカから流れてくる青柳さんの演奏で再現され、いく層にも重なる旋律が生み出す多彩な色彩から、改めてドビュッシーが印象派と言われる所以を感じた。

ドビュッシーが頭の中に描いたのではなかろうか、と思われるピアノの響きの色彩が、100年経った今年、青柳いずみこさんがCDにしてくださる。5月の発売が楽しみだ。