自作

2018年1月24日(水)

こだわりには色々あるが、楽譜の解釈に徹底的にこだわっていらっしゃっる国立市のH先生のこだわりは、ピアノ以外にも幾つかお持ちになっていらっしゃる。

オーディオの趣味も、そのこだわりの一つに一つにしていらっしゃる。
お互いの時間の許す時には、蓄音機を聴き前世代の人智に感動したり、自作の真空管アンプでレコードを聴かせてくださる。

人はこだわって物に接していると、日常を確実に超える世界を見つけ、そこから享受する味わいに浸るという、常人には踏み込めない領域を見つけるものだ。と、H先生としゃべるたびに感じている。

今回は、新年のお楽しみ会?で、更なる深みを体験させてもらった。

H先生は、真空管のアンプを自作なさっていらっしゃる。

話しを伺っていると、最初は既製品の物を購入なさっていらっしゃったようだが、自身の音を見い出すには自作だろう、ということから始まられたようだ。そもそも、電気技術が好きでなければそういう事にもならないだろうが。

今回、一緒にお宅をお邪魔させてもらった、会社のS君の趣味の一つアンプの製作があったようだが、S君の知識もなかなかなもので、H先生と電気回路の話しのキャッチボールが充分できていた事が、今回、話が更に深くなっていくのを手伝った。

こっちは、中学生の時アマチュア無線技士の免許を取得した時に勉強した、電気回路の知識を記憶の奥底から引きずり出し、コンデンサーの容量やら、バイアスやらの話について行くのが精一杯だった。

数値的な会話で着地かと思いきや、最後にH先生曰く

「行き着いた所は、自作アンプ。それも数値的な測定などに頼らず、色んな真空管を手に入れて試し耳で判断するのが、音楽を聴く意味で一番しっくりきた」

確かに、何種類かの自作アンプをつなぎ変えて聴き比べさせてもらったが、オーケストラが良い感じなアンプ、室内楽ならこっちかな、と、時には真空管を差し替えて頂いたり、違うアンプの場合コンデンサーの種類を説明いただいたり、真空管やコンデンサーの双方が、響の特徴を作るのに随分影響を与えるのが良くわかった。

部品の組合せで響が変わるのを体験していくうちに、何やらピアノ製作と共通するものを感じた。ベヒシュタインなどのドイツのピアノは、音楽家と対話しながら試行錯誤しながら製作し、数値的な裏付けは後でついてきていると感じる。今でこそ、コンピューターでの設計は当たり前になってはいるが、個性の根拠は数値で作られたのではなく、感覚から生まれたものだ。

こんな事を考えながら、ラローチャのモーツァルトピアノコンチェルトでホールの中のような臨場感を堪能させていただいた。