【連載】ベヒシュタイン物語 第3楽章 ベヒシュタインはこうして作られる

 

31,《一流ピアノを持つぜいたく》

 

本物のドイツ製のピアノに触れて、本場のピアノ作りの思想に初めて出逢った、という方も多いと思います。日本には、ピアノは江戸時代末期からはいってきましたが、そのものを見て、物まねからピアノを作り、ついには台数において世界一のピアノ生産国にまでなってしまいました。しかし、これはピアノ産業としての世界一であって、「物作りの心」までは輸入できませんでしたし、当時の音楽家や製作者にとってその心や歴史を理解するには、あまりに情報量が不足だったと思われます。メーカーとしても、企業規模を維持していくために、芸術品としての品質か利益の追求か、といった二者択一を迫られたとき、日本企業の体質として、どうしても後者を選ばざるを得なかったわけです。その理由、時代の要請もよく理解いただけると思います。

しかし、今のあなたの立場、それがピアニストや音大生はもとより、五歳のお子様や七〇歳のご老人が初めてピアノを始めるにしても、ちょっと無理をすれば最高級ピアノを購入できるとしたら、ベヒシュタインをおいてないと断言できます。①お子様のピアノレッスンを楽しく、そして音楽の才能を開花させるために、②音大生・ピアニストの卵の方には、先生や教授の言われることが、ピアノで実現できてしまうので、とてもよく理解でき、テクニックの上達を一段とよくし、あなたの演奏能力を格段に高めるために、③七〇歳のご老人が余生をほんとうに楽しんでピアノを続けられるように、④そしてどなたにも最も大切な、弾く楽しさを倍化させるためにそれが最適なピアノだからです。

蛇足ながら、なぜ、このような傲慢な言い方ができるのでしょうか。それはまだ非常に数は少ないのですが、ベヒシュタインを購入されたほとんどの方が感謝の言葉を述べられているからです。

 

つづく

 

次回は第4楽章 日本におけるベヒシュタイン 32,《首相官邸のピアノ》

をお送りします。

 

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向井

 

注: この内容は1993年発行のベヒシュタイン物語(ユーロピアノ代表取締役 戸塚亮一著)より抜粋しておりま す。なお、この書籍の記載内容は約20年前当時の情報を元に執筆しておりますので、現在の状況・製品仕様と異なる点も多々あります。予めご理解頂けますよ うお願い申し上げます。