【連載】ベヒシュタイン物語 第一楽章 創立者カール・ベヒシュタイン

6.《ロンドンの博覧会出品では・・・》

数年後、カール・ベヒシュタインは、ロンドンの有名な工業および芸術博覧会に、自分の製作した楽器を出品しています。1862年のことです。当時のイギリスの巨大で強力なライバルをさしおいて、この博覧会でベヒシュタインは、銀メダルを獲得しています。その際の記述は、次のようになっています。

「プロシャ(王国)、カール・ベヒシュタイン(1448)、王室御用達

1856年8月創業で、既に90名の工員をかかえ、たった6年の間に、グランドピアノ140台を含む、約300台の楽器を製作しており、ここ数年は、アメリカ、アジア、イギリス、ロシアにも輸出している。この博覧会には、特別製のグランドピアノ2台を出品している。ベヒシュタインの楽器は、音に極めて新鮮な輝きがあり、軽やかなタッチでどの音域も同質の響きを持ち、何よりも、かなり乱暴な弾き方にも充分に耐えられることが特徴である。この楽器は、喜ばしいことに、このロンドンで、多くの賛同を得ることができた。そして、この評判は、まもなくイギリス中に広まることであろう。一台のグランドピアノは、スタインウェイの開発になる交差弦方式を採用している」

実際、此のピアノはリストの荒れ狂ったような奏法にも耐えたし、ビューローをも満足させていました。イギリスの批評家のあいだで、ベヒシュタインはアップライトもグランドも、輝かしい資質を持っていて、充分自慢に値する、と注目されています。極めて新鮮な輝きを持った音、軽やかなタッチ、音域による格差がない、といった特徴は、現在のベヒシュタインにも、そのまま受け継がれています。

 

つづく

2nd London Expo第二回ロンドン万博会場風景

 

 

次回は

《拡大の時代―国際市場へ》

をお送りします。

 

向井

 

注:この内容は1993年発行のベヒシュタイン物語(ユーロピアノ代表取締役 戸塚亮一著)より抜粋しております。なお、この書籍の記載内容は約20年前 当時の情報を元に執筆しておりますので、現在の状況・製品仕様と異なる点も多々あります。予めご理解頂けますようお願い申し上げます。