ベヒシュタイン A185
戦前の最もベヒシュタインが繁栄していた1900年代初頭の製造。100年以上たってなお、その伝統的な音色は色褪せず華麗な音楽を奏でてくれます。外装は珍しい6本脚、異なる種類の木材をはめ込み細工で装飾、透かし彫りの譜面台など贅沢な仕上げ。100年前の楽器と言えど、ヨーロッパピアノは修繕しながら使えばそれ以上の年月現役で弾けるだけの素晴らしい作りをしています。
概要:ベヒシュタイン A185
モデル名 | ベヒシュタイン A185 |
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仕様 | ウォルナット艶出し |
サイズ | 幅:153㎝ 奥行:185㎝ |
価格 | ¥5,150,000 |
状態 | 中古(1909年製) |
展示 | 赤坂ベヒシュタイン・センター |
展示写真:ベヒシュタイン A185
現代のピアノに慣れ親しんでいる方の中は、もしかしたらこの響きに戸惑う方がいらっしゃるかもしれません。音質に殆ど金属的な響きが混じらず、木をコンコンと叩くような温もりがあり、飾らない素直な音を出しています。音の立ち上がりは早く、減衰も比較的早いですので、
いつも弾いている曲をこのピアノで弾くとかなり印象の違うものに聞こえてきます。
ピアノは鍵盤から弦までに沢山のメカニックが介在している関係で、弦や管楽器に比べて音を指でコントロールする意識をもちずらい楽器と言えます。しかしこのベヒシュタインA185は、弦を指で直接操作しているような感覚で演奏を楽しむことが出来ます。立ち上がりが良く素直な音のせいか、タッチやそれを司る弾き手の心がダイレクトに音に反映されるように感じられます。そしてコインの表裏のように、実はこの感覚が人によって弾きづらいと感じられる要素の一つとなっています。
例えば管弦楽器は弦やリードを直接身体で操作しますが、まともに音を出せるようになるのにそれなりの修練が必要になります。逆に言えば、手指のコントロールと感情移入次第でいくらでも変化に富んだ豊かな音色を引き出せる、ということで、鍵盤を押せば基本的な音を出せるピアノとは、音色に対する弾き手の感覚が違ってきます。この100年前のA185は管弦楽器のように「もっと良い音色が出せるよ!」と弾き手に語っているのかもしれません。
ベヒシュタインを愛用していたドビュッシーが生きていた時代に生まれたこのピアノの音色は、本人が耳にしていた音色にかなり近いはずです。それだけでもノスタルジックでロマン溢れるお話ではありますが、この楽器の響きは現代のピアノに慣れすぎた私たちに、過去の大作曲家たちが本当にピアノで表現したかった心の奥を映し出そうとしているのかもしれません。