再生

2009年8月9日(日)

「このピアノ大丈夫でしょうか?以前見ていただいた調律師さんに随分痛んでいて自分では手に追えないと言うんですが、国産の新しい物に買い替えた方がいいのでしょうか?」

何時も調律に伺うピアノの先生の近所の方が、ピアノが直るか直らないか解らずお困りだと言う事で、訪問させていただいた時にあった会話だ。

自分と同じ職業を生業にするピアノ技術者が、技術のわからないピアノ愛好家に対し、的確な事を言えなかった結果、
「国産の新しい物に買い替えた方がいいのでしょうか?」
と、不安を持って訴えるに至らせてしまった無責任な職業意識に怒りを感じながら、ピアノとの経緯を詳しく伺った。

現在小学生のお子さんをお持ちの奥さんが小学生のとき、お父さんの仕事でハンブルクに住んでいた時に買ってもらったというスタインウエイのアップライトだった。ハンブルクにお住まいだった時はご購入されたスタインウエイハウスから技術の方が派遣されていたそうだ。
帰国したあと、知り合いの紹介でドイツから持ち帰ったピアノを杵淵ピアノさんに調整してもらったそうだ。その時の伝票もドイツで購入された時の請求書と一緒に大切に保管されていた。

ご結婚された後、海外転勤で今度はニューヨークでそのピアノと共に生活をされたそうだ。さすがに北米の乾燥した空気は、日本の湿気を吸った後のピアノにダメージを与えたようで、ニューヨークスタインウエイに技術者の派遣を依頼し、漸くピアノをご家族で楽しむ事が再びできるようになったそうだ。

そして、再び帰国され、数人の調律師にピアノを見てもらった後、先の発言になったわけだ。

確かに、音程の変化のみならず、気候の変化でピアノアクションの寸法は大幅に狂っていた。ハンマーのねじれも何カ所酷いのがあった。
だが、それがどうしたと言うのだ。ちゃんと調整さえすればそれで問題無さそうだ。途中で手がけた人たちも、ピアノの事をよく解っている人たちだったようで、無理な手を施してしまった形跡はない。

今日、工房に一週間程お預かりし修正したアクションを持って、会社のNさんと一緒に調整を一日かけて行った。

Klaviatur Bohn

ベルリン/ノイケルンに当時あった鍵盤メーカー Bohn の刻印のあるSteinway Vは再びご機嫌になった。

手放されなくて本当に良かった。

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