会場の雰囲気で、響き全体が違った形状になり、作者と演奏者の芸術性の意図の新たな側面に触れられたような。。。という体験をされた方もきっと多いと思う。
その雰囲気が独特で、室内楽や、語り付きのコンサートでの利用が多いのが、所沢の松明堂音楽ホールだ。
ここで行われるコンサートは、その空間が醸し出す独特な雰囲気も手伝い(洞穴やワインケラーを彷彿させる)会場に身を置く時間の経過と共に雑念が振り払われ、気持ちが響きに自然に没頭していく。
古楽器の演奏会場として有名な場所だが、ここのベヒシュタインもいい感じでその独特な会場の雰囲気になじんできたように感じる。
ガンバやリュート、リコーダー、チェンバロ等、古楽器の響きを想定し、設計者の方も独特な雰囲気をお造りになったったと思う。
なので、ベヒシュタインを入れた当初は、異質な物がはいりこんできたような違和感が無かったと言えば嘘になる。
しかし、ここの所、会場の空気がベヒシュタインに入り込んできたような感じがする。
今回も、調律をしていてとても自然な感じを受けた。今回は声楽のコンサートだったが、室内楽に本当に良いホールだと改めて思った。
同日午後は、銀座のヤナセショールームでのコンサートだった。
全く気分も変わり、土の感じから空の感じに周りの色合いも変わった。
車だけでなく、ドイツからやってきたかわいらしい楽団も加わり、ドイツの何処かのショールームに入るような雰囲気だった。
ベヒシュタインの切れの良い響きで遊ぶ、内声を意識的に動かす川島基さんの演奏は、現代のドイツらしさを感じさせメルセデスのエンジニアの遊び心、そして、それをPRしているショールームの雰囲気そのものと見事に調和しているように感じた。
丁度2週前の今日は、響きの感じ方を、会場の違いによって大きく変化させられた一日だった。