録音はホールで行なう事がクラシックの場合多い。
ポピュラーの録音では、以前スタジオでの録音の仕事をさせていただく事はあったが、スタジオでのクラシックの録音は自分にとって今回数回目の経験になる。
3月〜4月の間の数日に分け、ジャズピアニストの船本泰人さんのお父様が経営する世田谷の船本スタジオでソプラノの太田みのりさんの収録を行なっている。
ピアノの伴奏を内藤晃さんがする事になり、彼からの依頼で当スタジオに設置されるザウターのピアノの調律をさせていただく事になった。
ホールとスタジオの大きな違いは残響だ。
クラシックの場合、回りの響きの環境に演奏者はモティベートされ、イメージ造りがし易いという理由でホールや教会のような響きの多い所で収録する事が多いようだ。
あと、ホールの場合会場全体が楽器の一部になるので、響きを意識した音造りを演奏者はする。なので、調律・整音はその残響環境がベースになる。
スタジオの場合、残響が極めて少なくなるので楽器の音源そのものに意識が集中する事になる。なので、演奏時には後で創られるであろう響きをイメージする事になる。
楽器同士の音のかぶりや、音源そのものを録音しているので、録音した音のエンジニアリングはホール録音よりやり易くなるだろう。
演奏者の難しさ、録音技師の難しさの部分が夫々の場合で違うと感じる。
どうあれ音源になる楽器そのものの能力は、響きの仕上がりに大きく影響する。
スタジオ録音と言えば、グールドの録音が有名だが、このような仕事をさせていただくと、彼がどんな録音をしていたのかさらに想像が膨らむ。
内藤さんとは何度も仕事をさせていただいているので、彼の指と耳が何を感じているのかを自分も理解しやすい故、調律に与えられた時間を有効に使う事ができたと思う。