豊増昇のベヒシュタインE

2023年6月12日(月)

 

吉祥寺コミュニティセンター北に素晴らしい楽器があります。豊増昇が使っていたというベヒシュタインのフルコンサートグランドEモデル。製造番号がなく、ケース番号から1928年頃の製造ではないかと思われます。

そこの担当者からこの楽器の来し方、いわれを聞くと非常に興味深いです。御前演奏の際にいただいたピアノだとか、豊増氏の手が小さかったのか鍵盤が少し細いとか(それは象牙鍵盤を貼り直した際に、少し隙間が多くなったことに由来すると思われますが)、2台あるから1台を弟子に譲ったとか。

ただ、置かれていた環境が悪かったのか、弦は錆び、しみも多く全体に重苦しい雰囲気があります。アクションはアブストラクトアクション採用で、指によくなじむタッチが得られ、普段あまり弾かれていないせいか鳴りは今一つですが、とてもいい音がします。

豊増氏は調べると、第二次大戦前の1936年にドイツへ留学し、ベルリンフィルと初めて共演した日本人とも。バッハやベートヴェンの全曲演奏を行ったと。さらには小澤征爾氏に指揮を専攻するよう勧めたなど、日本の音楽界に影響を与えたピアニストです。だいぶん前のベヒシュタイン・ジャパンで作成したカレンダーにもそのサインが見て取れます(左下の方、漢字なのですぐわかります)。その小澤氏らが書いた「ピアノの巨人 豊増昇」(2015)という書籍も面白そうです。

こういった日本ピアノ界、ベヒシュタインの歴史においても重要な人物の楽器が、関係者の手を離れ寄贈されたとはいえ、かなり傷んだ状態であるということは残念に思います。外野からはいろいろな声が聞かれますが、よい状態にするための修理、維持には費用がかかりますので、なかなか難しい部分もあります。

今後も修理したらどんな音になるのかな?と想像しながら定期的にメンテナンスをしていこうと思います。

 

1 thoughts on “豊増昇のベヒシュタインE

  1. 豊増さんのピアノ聴いてみたいですね。誰か忘れましたが〝ベヒシュタインはいい仕事をした〟とか言ってました。さてダルベルトのフォーレを入手しました。落ち着いた音色でいい演奏だと思います。私も久々にsaphirレーベル、ナウモフ演奏のCDを取り出し夜想曲を聴き比べました。ファツィオリで明るい響きが魅力的です。夜想曲の他にレクイエムのピアノ独奏版等が入ってます。フォーレ愛に溢れた演奏です。今日のような晴れた日はナウモフ、雨の日はダルベルトでしょうか?

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