畏敬

2016年6月19日(日)

前回ドレスデンを訪問した時は残念ながら時間の関係で中に入ることができなかったが、今回は幸いなことに聖母教会 (Dresdner Frauenkirche) に入場することができた。フランクフルトメッセの後、ザクセン州の最もチェコよりのザイフェナースドルフにあるベヒシュタイン工場を訪問したが、その旅程中の週末の4月10日、ドレスデンの見学をする事ができた。

Dresdner Frauenkirche

ドレスデンはピアノ製造の歴史の中でも重要な都市の一つになる。フォルテピアノは1700頃にイタリア・フィレンツェのクリストーフォリが発明したというのは有名な話であるが、ドイツでその新型アクションの模倣という形でフォルテピアノを完成させたゴットフリート・ジルバーマン (1683-1753) が工房を構え、亡くなった都市がドレスデンになる。彼の徒弟たちが、その後ヨーロッパの他の地でマイスターとしてフォルテピアノの製造をし、その製造流派がヨーロッパの現代のピアノ製造に継承されていることを考えれば、ゴットフリート・ジルバーマンこそその後二つに分類されるフォルテピアノ製造流派の礎になる大マイスターと言って良いと思う。
ゴットフリート・ジルバーマンは、かの大バッハ (Johan Sebastian Bach) のオルガンやチェンバロを製作していた事でも知られている。

Dresdner Frauenkirche Orgel

ジルバーマンは1736年、ドレスデン聖母教会にパイプオルガンを製作し、バッハが同年12月に演奏会を行ったと記録されている。そして、バッハの丁度1世紀前に生を受けたハインリッヒ・シュッツはドレスデン宮廷楽長を務め、ここ聖母教会に眠っている。

Dresdner Frauenkirche Schutz

1945年に爆撃で瓦礫となってしまった聖母教会が再建された事で、我々はバロック期の音楽に想いを馳せ、当時のエネルギーを肌で感じることがることが許される。
外壁の新旧の石の組み合わせを見た時、この教会の再建を実現させたドイツ人の情熱に畏敬の念さえ覚えてしまう。完全に破壊されていない石は同じ場所に設置されているという。

ゴットフリート・ジルバーマンの製作したオルガンはドレスデンのカトリック旧宮廷教会で聴く事ができ、今回の訪問ではドレスデン聖十字架合唱団のハーモニーと共にこのオルガンの調べも堪能する事ができた。

カトリック旧宮廷教会

ベヒシュタインが言う、ピアノの響きの理想の核のようなものをドレスデンの街から感じた