継続

2017年12月15日(金)

工房コンサートは、その名の通り工房でのコンサート。

通常のステージでは憚られるが、でもやってみたいな、と普段思っていることに切り込み、自由にピアノ演奏表現の可能性にチャレンジした。

キャラクターの違うピアノを組み合わせたデュオだったり、フォルテピアノとモダンピアノでコンチェルトをしたり、極端な不当分律での調整感の検証など、「普通、コンサートで実験などする人いないよ。。」と思えるような事を楽しく行ってきた。

その、“工房コンサート”も早いもので、スタートから約10年の歳月が流れた。

今回の工房コンサートは、音楽学学者 野本由紀夫先生をお招きし、

ベートーベン・シンフォニー第9 2台ピアノ版  F.リスト ピアノ トランスクリプション

全楽章を行った。

非常に密度の濃いもので、今迄の工房コンサートの集大成と言える内容だった。

ピアノは、現代のベヒシュタイン フルコン C.Bechstein D-282 と約90年歳の離れたC.Bechstein Eの2台を組合わせた。同じフルコンサートでもピアノの長さが10cm近く違い、弦長と弦の太さが同じ音名でも微妙に異なる。

それにより、特に中域から低域は、高い倍音が同じ周波数にならず、2台重なると響きの高い部分に揺らぎが生じる。

よって、一台の場合、又、全く同じ機種2台の場合よりも、ステレオ効果に微妙な揺らぎの効果が加わり、よりシンフォニックな感じが生まれる。

この面白さは、フォルテピアノをソロに、オケパートを現代のベヒシュタインで行った時に感じた効果を思い出させた。

ソロピアノとオケパートの音質が微妙に一致していなことから、ソロとトゥッティのコントラストが明確になり、ソロの音量が現代のピアノのように期待できないフォルテピアノなのにも関わらず、ソロになった時のメリハリ感は強く感じられた。

音色が異なると、分離感はより強くなるわけだ。臨場感がモダンピアノ2台よりある。

同じピアノ機種2台がベストという事を、まるで正しいデフォルトの如くホールの担当者に言う業者がいるが、音楽に従事している関係者は、自らの耳で、ピアノが異なった2台ではどういう効果が生じるかも体験して欲しい。

確かにEnyaとか達郎のように、同じ人物が声を重ねることによってのみ得られる、独特なサウンドエフェクトが魅力的な音楽もある。

しかし、2台ピアノの為の楽曲の場合に期待する効果はそれとは違うのでは、と私は工房コンサートの検証で確信した。

ご存知のよう第9はオーケストラ楽器に加わり、声楽ソリストや合唱が入る。

ピアニストは声の部分もオケ楽器とは雰囲気を変え響かせたい。

いろんな要素が絡むからこそ、リストのピアノ トランスクリプションの難解さがピアニストにあり、聴き手には、そこがスリリングになる。

私自身工房コンサートで、耳、感じ方の修復という意味で、大きな収穫があった。

溢れかえる情報を整理してピアノ音楽を検証する機会は、音楽愛好家の為にまだまだ終えてはいけないという気持ちが今回の集大成で更に強くなった。