V.アシュケナージ引退宣言に思う

2020年1月19日(日)

 

82歳の世界的ピアニスト、そして指揮者でもあるウラディミール・アシュケナージ氏が、現役を引退するとニュースで知りました。「ステージで死ねば本望」とまでは言わないですが、昔は自ら引退宣言をする人は少なかったように思います。(こちらが知らぬ間に病に倒れ、やむなく引退せざるを得なかった人も多くいると思いますが)

最近では(最近でもないけど)ブレンデルの引退が記憶にあります。理由は一つではないと思いますが、プロとしての演奏に自信というか責任が持てないという意味で引退するのはすごく潔いと思います。「惜しまれつつ勇退」というのが何より美しいですね。もっとゆっくりしたいというのが本音かもしれませんね。

ピアノ技術という仕事も、聴力の衰えとともに引退をしていく仕事だと自分は思っているので、年金生活に入る前には引退をすることになるのか?と考えたりもしますが、できればあと20年は仕事をしたいなぁと思ってはいます。そもそも年金がもらえるのか?いつから?という疑問は残りますが。

さて、そのアシュケナージ氏。その輝かしい経歴とともに、波乱万丈のキャリアだったと思います。旧ソ連時代の国の威信をかけたコンクールでの優勝・上位入賞、そして亡命。ソ連崩壊後の凱旋帰国、ガヴリーロフとロイヤルフィルだったか、モスクワのライブ演奏は熱くこみ上げるものがありました。

モーツァルトの弾きぶりコンチェルト、ショパン全曲録音、ラフマニノフのコンチェルト(プレヴィン、ハイティンクのどちらも)も素晴らしく、何度も聞いています。指揮でもシベリウスやラフマニノフの交響曲、コンチェルトの伴奏でも多くの録音があります。30年くらい前にベルリン放送響とマイスキーでドヴォコンを聞いたのを思い出します。

日本に入ってきたベヒシュタインも何台かはアシュケナージ氏が選んだものと聞いています。今後はどのような活躍をされるかはわかりませんが、息子との共演などはあるかもしれませんね。