作曲家のピアノ

2025年11月4日(火)

 

ショパンコンクールの熱気もだいぶん冷めたように思うこの頃、夏のものすごかった暑さもどこへやら、急に寒さすら感じるようになりました。

11月なのでこれが当たり前なのだと思い返しつつ。か行が終わりさ行へ。

 

「作曲家のピアノ」というとプレイエルやクレメンティでしょうか? それはピアノ製作者もしくは販売者自身が作曲家だったという意味ですが、使っていたピアノ、所有していたピアノといって思いつくのはやはりショパンでしょうか? 「気分のすぐれない時はエラールを、気分の良い時はプレイエルを弾く」という言葉は、彼の演奏スタイルから楽器の特徴を捉える良い材料となります。マジョルカ島へもサンドがプレイエルを手配して、到着まではパルマ産のピアノを弾いていていて、その後プレイエルで作曲したのがプレリュードの「雨だれ」だとか。

第2回のピリオド楽器でのショパンコンクールでは、プレイエル、エラールとブロードウッド、そしてポーランドのブッフホルツが使用されたと。上記3台は有名なメーカーですが、ブッフホルツとは? ポーランド時代に使用していたピアノで、ウィーン式アクションで、現存しておらず復元した楽器とのこと。どこまで忠実に復元したのか気になりますが、当時の木材、弦、ハンマーではないと思うので、音はだいぶん現代風なのでしょうか? CDでまた聞いてみたいと思います。

 

ショパンはこのくらいにして、次はベートーヴェン。彼のピアノソナタを調べると、どの時期にそれらの楽器を使用したかがわかるという。楽器の音域をみていくのですが、あるソナタでは、当時使用の楽器ではなかった音域にまで及んでいたり、ふつうはこのまま下がっていくのに急に音が折り返されたり、いかにベートーヴェンが発展途上のピアノに期待し、そして落胆していたかがわかると。シュトライヒャー、ブロードウッド、エラール、グラーフなど彼の使った楽器は現存するものも多いので、実際に目にすると感慨深いです。耳の聞こえなくなった彼のために、1音に4本の弦が張られているグラーフをボンの生家で見ました。(実際はあまり使われなかったらしいが)これは有名なピアニストも弾いている音源があるのでまた聞いてみましょう。

 

ライプツィヒのF.メンデルスゾーンの家を訪問した際、彼の部屋を再現したところにピアノもありました。ターフェルクラヴィーアとフォルテピアノだが、なぜか楽器があるだけで興奮してしまい、メーカーまで見る気がまわらなかったのが悔しい。トレンドリンではなかったか?とひそかに思っているが、確証はありません。また調べてみるしかないですね。

 

ザルツブルクのモーツァルトの生家にもワルターがあります(姉のナンネルが弾いたとも)。今のピアノとは違う、膝で上げ下げするペダルのあるピアノ。A.シフが弾いているCDがある。また聞いてみましょう。

 

プラハのドヴォルザークの博物館にはベーゼンドルファーがあります。その楽器で録音したCDも聞きました(クパヴィルというピアニスト)。ウィーン式アクションと思われる外観とひなびた印象の音であった。個人的に、この博物館の外でスリの被害に遭いそうになったため、あまり印象がよくないのだが。

 

そして、今回の最後はやはりF.リスト。ピアノの魔術師ですから、相当なピアノを弾いてきたことでしょう。有名なところでは、ベーゼンドルファー、かつて伊藤博文がウィーンへ行った時にリサイタルをしているリストを聴いて、日本へ連れてきたいと言ったとか。アメリカのチッカリング、スタインウェイ、フランスのエラールがレペティションレバースプリングを開発した後はさらに「ラ・カンパネラ」を難しくしたというのも有名な話。

私がワイマールのリストハウスに行った時は、イバッハのアップライトがありました。そしてやはりベヒシュタイン。今現在もリストに貸し出されている状態と聞きました。楽器としては、かなりオーバーホールで手が入れられていて、オリジナルの要素が薄まっていると聞きましたが、今も演奏できる、耐えられるということにポイントが置かれた結果でしょう。楽器なので、弾けなければ意味がないということで、ストラディヴァリウス(メシア)のように数十年も弾かないでオリジナルに近い状態を保存するというのとは違います。

 

次は「シベリウスのピアノ」、作曲家のピアノが少し続きます。