1867年製ベヒシュタインが語るもの。
私たちが過去の響きを現代の調整に生かす理由

こんにちは。ベヒシュタイン・ジャパンの加藤です。

今回は、工房での外装修理の様子から、展示室に眠る貴重なヒストリカル楽器の紹介を通し、私たちが守り続ける「音楽の本質」とピアノ作りの哲学をお伝えします。

工房のエリアでは、ピアノの外装修理作業が行われています。お客様の元で長い年月を共に過ごしたピアノには、どうしても外装に傷がついてしまうものです。私たちは吹き付けによる全塗装までは行っていませんが、部分的な塗装や傷の修復、専用の機械を使った鍵盤や外装の磨き上げをここで丁寧に行っています。

照明は早い時期にLEDに交換しました。LEDの光で照らすと表面の状態が非常によく分かるため、より精密な外装作業ができるようにするためです。

施設内にはフォークリフトも備えています。コンテナを横付けしたり、保全倉庫から解体したピアノを運び込んだりして、ここで受け入れたものを順次作業していく流れになっています。

修復を終えた楽器や、新しい持ち主との出会いを待つ楽器が並ぶのが、中古ピアノの展示室です。

基本的には中古ピアノの展示場ですが、新品のピアノを選定する場所として使うこともあります。室内には、多様な歴史と個性を持つピアノが並んでいます。

ーー八王子のこの場所へ、実際に見に来ることはできるのですか?

もちろんです。予約を入れていただいてもいいですし、突然いらっしゃっても大丈夫ですが、事前にメールなどで一言ご連絡いただけるとスムーズかと思います。

また、フランスで作られていた頃のプレイエルもあります。これも私たちが輸入販売したものですが、当時の南フランス・アレスの工場で作られた楽器です。個人のサロンで大切に使われていましたが、オーナーの方がご高齢でサロンを閉めることになり、私たちの元へ戻ってきました。弦などの消耗品はすべて交換済みです。ドイツの楽器とは異なる独特の柔らかい音がして、非常に人気のある個性的なピアノです。

プレイエルは時代によってドイツの会社が委託製造していた時期などもありますが、この時代のものはフランスの工場で手作りされていたため、非常に価値があると思います。

展示室のさらに奥へ進むと、ピアノの歴史そのものを物語るような貴重な楽器たちが鎮座しています。

少し前まで日比谷のショールームに展示していた、1867年製のベヒシュタインです。現在のピアノは低音の弦が交差して張られていますが、このピアノはすべての弦がまっすぐに張られた「平行弦」の構造をしています。リストの弟子であるハンス・フォン・ビューローが、リストの作曲したロ短調ソナタを初演したのが、このピアノが作られる10年前のことです。その初演時にベヒシュタインが使われたことでブランドが有名になっていくのですが、まさにリストやビューローが使っていたのと同じタイプの楽器です。歴史的な意味でも価値が高く、ピリオド楽器を研究されている方には大変興味深い一台だと思います。

展示されているのは販売用のピアノだけではありません。ヒストリカル楽器のコレクションとして、1830年頃に製作されたローゼンベルガーも保管されています。

こちらは非売品です。当時のピアノはまだ鉄骨が使われておらず、チェンバロと同じようにすべて木でできています。シューベルトが生きていた時代、ロマン派が開花した時代の楽器で、ヒストリカルな響きを探求するレコーディングや演奏会でも使用されています。

最新のピアノを扱う私たちが、なぜこれほどまでに古い楽器を大切にし、研究を重ねるのか。そこには、私たちベヒシュタイン・ジャパンが掲げる明確な哲学があります。

私たちがなぜ古い楽器を大切にするのか。

それは、現在演奏されるピアノ曲の多くが、1800年代前半から1900年代初頭にかけて作曲されたものだからです。当時の作曲家や音楽家がどのような楽器を使っていたのか。それを作る側も提供する側も理解しなければ、音楽の本質的な部分は分かりません。ベルリンのベヒシュタイン本社でも、ヒストリカル楽器を数台保有し、技術者が研究の参考にしています。ベヒシュタインの発想は、F1のような単なる高性能なピアノを作ることではありません。当時の本質的な響きを、現代の音楽表現といかに整合させるか。それが根底にあるため、古い楽器を理解し、今の楽器の調整に生かしていくことが非常に重要だと考えています。

展示室には他にも、フランスのブランシェが作った二段鍵盤のチェンバロのレプリカや、スタインウェイの小型アップライトなども展示しています。八王子では展示するだけでなく、実際に中古ピアノの販売も行っていますので、ご関心のある方はぜひ足を運んでみてください。

ピアノは単なる工業製品ではなく、時代を超えて音楽家たちの想いと響きを現代に伝える懸け橋です。私たち株式会社ベヒシュタイン・ジャパンは、これからも過去の偉大な遺産に敬意を払いながら、その本質的な響きを現代のピアノ調整に生かし、皆様に最高の音楽体験を提供し続けます。当時の響きと現代の技術が交差するこの場所で、ピアノという楽器の奥深さを感じてみませんか。

八王子・技術営業センターでは、丁寧に修復された中古ピアノの展示・販売を行っています。100年の時を超えて蘇った音色に触れてみたい方は、ぜひ一度足を運んでみてください。

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