たった15分で「運命の1台」を決断。
ショパンコンクール最年少出場の中島結里愛さんが語る、大舞台の裏側

2026年4月2日(木)

前回に引き続きピアニストの中島結里愛さんと弊社代表取締役 加藤正人との特別対談(後編)をお届けいたします。
前編では、東京の部屋に「ベヒシュタインのアップライトピアノ」を選んだ理由や、日々のストイックな練習について伺いました。今回の後編では、いよいよ舞台を世界へと移し、第19回ショパン国際ピアノコンクールの本大会でのエピソードに迫ります。

加藤:
こんにちは。ベヒシュタイン・ジャパンの加藤です。
今日は中島結里愛さんをベヒシュタイン・セントラム東京にお招きして、ピアノのお話を伺いたいと思います。よろしくお願いします。
今回は、第19回ショパン国際ピアノコンクールの本大会での様子について、さらに深くお聞きしていきます。

中島さん:
よろしくお願いします。

15分で「運命の1台」を選ぶ。究極の決断の裏側

加藤:
ショパンコンクールのお話を少し聞かせていただきたいのですが。本番前に何台かのブランドからピアノを選ぶということですが、その時の様子はどんな感じでしたか?

中島さん:
まず5台並んでいました。今年は15分で5台の中から選ぶことになっていて、1人で決めるので、ホール内には誰も立ち入れなくなっていました。母や先生も立ち入れない状況でした。

加藤:
1人だけですか?

中島さん:
はい、1人だけです。カメラの方はいらっしゃるのですが、関係者は一切立ち入り禁止で。15分間5台を弾いて、帰ってきたら事務局にサインをするという形で、考える時間はそれほどありませんでした。

加藤:
15分というのはすごく短いですね。満遍なく全部の5台を弾かれましたか?

中島さん:
はい。配分は完全に自由なので、1台か2台弾いて決めたらそればかり弾いている方もいらっしゃったと思いますし、1回さっと弾いて2周目を弾く方もいたと思うのですが、私は大体3分ずつだったかなと思います。

加藤:
1人で弾かれたステージから袖に帰ってきて、それで悩まれるということですが、その時はお母様はどうなさっているのですか?

中島さん:
私はその場所(袖)に母もいたのですが、1人で決めました。もちろん相談はできる状況なのですが、今回は私が1人で決めました。

「想像通りの音が出せるか」直感が導いた選択

加藤:
お決めになった要素というか、どんな観点から決めたのですか?

中島さん:
一番大事なのは、「このピアノと一緒に挑みたい」という気持ちになれるピアノを選ぶことだと思うのですが、具体的に言えば、ベヒシュタインのピアノは5台目に弾いたのですが、より想像通りの音が出せるなと思いました。

端的に言えば、多彩な音が出るし、コントロールの面でも弾きやすいなと思ったので選ばせていただきました。

加藤:
お決めになった後で、専属の調律師に整音や調整などのリクエストはできたのですか?

中島さん:
はい。次の日からメーカーのピアノでの練習に当てられるので、その時にお話しして、本番の日はこういうふうに作ってほしいとお伝えしました。

加藤:
どんな要求をなさったのですか?

中島さん:
主には、繊細な音を出す時、ピアニッシモなどの音を出したい時に、こもりすぎないけれど通るような音を出しやすくしてほしい、ということを一番お願いしたかなと思います。私も英語が完全に流暢ではないので、なんとかコミュニケーションをとりました。

加藤:
ピアノの調律師といろいろ対話をして、コンサートの前に要求をするということも、そんなにある機会ではありませんから、素晴らしい経験ですね。

大舞台の重圧を乗り越える。本番前のマインドセット

加藤:
本番のこともお伺いしたいのですが、私もビデオで拝見させていただきました。袖からステージにお上がりになって、だいぶ緊張した感じでしたか?

中島さん:
緊張はあまりはっきり覚えていないのですが、緊張というよりは集中しようと努力していた感じでしたね。予備予選との違いを言うと、集中に入るまでに少し時間がかかったかなと思います。

当日の朝起きて会場に向かって、ウォーミングアップルームで1時間練習ができて、そこから舞台袖に行ってという流れで集中していくのが難しかったです。

加藤:
本番の時に、大勢のお客さんと審査員の前でピアノのサウンドが出ていくわけですが、スタートしていった時の様子はいかがでしたか。

中島さん:
まずステージに立った時に、客席に座ってホールを見るよりも大きいなという印象がありました。すごく大きな空間だなと思って、そこにほぼ満員のお客様が入っていらっしゃって、本当にワクワクしていたんです。
最初の一音目を弾いた時に思った印象としては、ベヒシュタインのピアノの特徴でもあるかなと思うのですが、立体的な響き方がするなと思いました。それがすごく印象に残っています。スタートのノクターンの最初の音か、最初の小節あたりで、すごい立体的な響き方をしてくれるなと。

加藤:
たまに、ピアノからダイレクトに耳に届く音と、ホールから跳ね返ってくる音があるなんて聞きますけれども、ホールのサウンドはどうでしたか?

中島さん:
私の印象としては、一番後ろまでバーンと音が届いて跳ね返ってくるというホールではなくて、少し特殊な構造でもあるので、音が上に行って浮遊しているという感じでした。響きすぎない教会という感じです。

想定外のチャンスを引き寄せる。努力がもたらす未来

加藤:
弾いていて気持ちがいいものですか? でも、コンクールは気持ちがいいどころの騒ぎではないですかね?

中島さん:
はい。普通のコンサートとは結構違いますね。
こんなに早くショパンコンクールに出ると思っていませんでした。15歳という年齢で出られるから目指そうと思っていたわけでも全然なくて。
そういう意味ではもう少し計画的だったら良かったかなとも思うのですが、人生って何があるかわからないなというのは一番痛感しました。努力を続けていたら、いろんな機会も舞い込んでくるなと。

加藤:
日々の積み重ねが、大きなチャンスを引き寄せたのだと思います。

中島さん:
私の年齢で言うのもあれなのですが、下の世代のみんなにも続いてほしいなと思います。

加藤:
中島結里愛さん、今日はお忙しいところ貴重なお話をありがとうございました。皆さん、どうもご視聴ありがとうございました。

中島さん:
ありがとうございました。